心臓、肺実質の2種類の組織から構成される単純胸部モデルにおいて、心臓の中心を点音源とする中心周波数50 Hz、持続時間100 msの心音が周囲の肺実質および胸郭を通過し、体表に装着した32個の心音センサで受信されるマルチチャンネル心音計測を想定した。心臓の音速を1560 m/s、肺実質の音速を40 m/s、胸郭の音速を1580 m/sと仮定したときに、心音の伝搬経路の音速を考慮し各センサで受信されるバーチャル心音信号をシミュレーションした。次いで、全バーチャル心音信号に逆問題の解法を応用することで、胸部の音速分布を再構成し、かつ点音源の位置が1点に収束するような計算アルゴリズムを確立した。 さらに、胸部の各臓器の音速と形態から心音の伝達シミュレーションを行い、音速分布の再構築アルゴリズムを検証した。 マルチチャンネル心音計測に用いる心音センサとして、前年度の医療用心音・呼吸音マイクロホンに替えて専用のマイクを開発し、8チャンネルのプリアンプ4台を用いて32チャンネルの心音を増幅後、64チャンネル同時受信可能なオーディオインターフェイスを通じて、心電図トリガとともに解析用ワークステーションに入力することで、マルチチャンネル心音計測システムを構築した。さらに、プリアンプを4台追加導入することで、64チャンネルの心音を同時取得可能なシステムにアップグレードした。 体表に設置した心音センサから心音を受信し、その位相差から心音発生源を推定することで、胸郭内の音速分布推定に有用なデータを得ることができた。
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