研究課題/領域番号 |
21K19887
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
三浦 重徳 東京大学, 大学院情報理工学系研究科, 特任准教授 (70511244)
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研究分担者 |
聶 銘昊 東京大学, 大学院情報理工学系研究科, 助教 (40816485)
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研究期間 (年度) |
2021-07-09 – 2024-03-31
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キーワード | 血管床 / 灌流 / 皮膚組織 / マイクロ流体デバイス |
研究実績の概要 |
本年度は、血管床の灌流性向上を目的として、血管床中央部の灌流が困難であることの原因究明と改善策について検討を行った。まず、血管床内に形成された血管径の分布を明らかにするために、培養7日目において血管床をCD31で免疫染色し、3エリアに分けて血管径を計測した。血管床外縁部の血管径は約62um、内縁部では約30um、中央部では約12umであり、血管床辺縁部から中央部にかけて血管径が極端に小さくなっていた。一方、光干渉断層撮影により培養期間中の血管床の厚さの変化を観察したところ、血管床中央部では厚みの減少が著しく、培養に伴って血管床中央部が陥没した凹型構造へと変形していくことがわかった。この陥没により血管床中央部の細胞、ECM密度が増加し、血管径が小さくなっていると推察された。そこで、血管床中央部の陥没を物理的に防止するため、ピラーを環状に配置したインサート(ピラーインサート)を3Dプリンタで造形し、血管床エリアに設置して培養を行った。その結果、ピラーインサートを用いない場合、培養15日目の血管床中央部の厚みは約0.84 mmであったのに対し、ピラーインサートを配置した場合は約1.9 mmに維持されていた。これに伴って、血管床中央部にはより太い血管網が形成される傾向が見られ、灌流性の改善に向け大きく前進した。 血管床が3次元組織の長期培養に有用であることを実証するため、培養ヒト皮膚組織の構築に関する検討を行った。これまでに、ヒト皮膚線維芽細胞を用いて構築した真皮組織内に血管網を形成することに成功しており、同組織にケラチノサイトを重層して表皮の階層構造を形成することで、血管床と気-液界面培養皮膚モデルとの統合を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
前年度の課題として持ち越していた血管床の灌流性向上については、大きな前進があった。ピラーインサートが血管床中央部の陥没防止と血管径の増大に有効であることを見出し、血管床中央部でも太い血管を形成することができるようになった。当初の計画では、本年度は血管床上に組織を配置/形成し血管を導入する予定であったが、組織と血管床とを機能的に連結するという観点から、灌流性の高い血管床の開発を優先した。また、まとめて購入した培地ストックのロットに問題があり、数ヶ月間にわたり血管内皮細胞の生育に問題があったことも研究の遅延に繋がった。以上の理由から、血管床と皮膚組織との連結を目指して引き続き検討を行うため、研究期間の延長を申請した。
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今後の研究の推進方策 |
延長申請した次年度は、血管床の安定した灌流方法の確立と培養皮膚モデルとの機能的な連結に取り組む予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
数ヶ月間にわたり血管内皮細胞の増殖性に問題があり、プロジェクトに関わる実験を停止して原因究明にあたった(まとめて購入した培地ロットに問題があることが判明)。そのため、当該期間中に使用するはずであった物品購入に関わる余剰金が発生した。
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