最終年度は、マイクロ流路型デバイスを用いた血管床灌流法について引続き検討を行った。血管床を構成する血管内皮細胞と線維芽細胞の混合比を変えることで、培養後期に問題となる血管床の収縮と血管径の制御が可能であることがわかった。そこで、培養5日目までに灌流可能な径をもつ血管網を作製し、培地灌流チャネルの出入口にカップ状の培地供給部を設置して静水圧による血管床の灌流を試みた。しかしながら、培養早期から培地チャネルを灌流すると、培地チャネルに接続されるべき血管網開口部の形成率が大幅に低下する傾向が認められ、灌流開始時期についても慎重に検討を要することが新たに判明した。代替案として、トランズウェル型血管床についても検討を行った。市販のセルカルチャーインサートのフレームに独自に加工したパリレン細孔膜を装着したもので、インサート内には血管床の足場となるハイドロゲルを、膜外側に血管内皮細胞を播種した。パリレン膜細孔の大きさ、形状、貫通孔面積について検討することで血管形成条件を最適化した。CD31で免疫染色、組織透明化処理後、ライトシート顕微鏡を用いてインサート内に形成された3次元血管網を可視化した。その結果、平面的に血管網が形成されるマイクロ流路型血管床とは異なり、パリレン膜上の細孔を起点として垂直方向(z軸方向)に伸びた血管床の形成を認めた。本法は、我々が先行研究で開発したトランズウェル型灌流デバイスと組み合わせることで、血管の走行方向に効果的に送液できると考えられ、新たな血管床構築法を見出すことができた。また、血管化皮膚組織を構築する培養条件についても検討、最適化を行った。 本研究を通じて、血管走行性の異なる2通りの血管床構築法を開発し、灌流法、血管床への皮膚組織積層法について取組んだ。血管床を利用した3次元組織の長期培養法の確立に向け基盤技術開発を進め、新たな方向性を見出すことができた。
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