研究課題/領域番号 |
21K19889
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
古川 克子 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 准教授 (90343144)
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研究分担者 |
牛田 多加志 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 名誉教授 (50323522)
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研究期間 (年度) |
2021-07-09 – 2023-03-31
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キーワード | テラヘルツ波 / 計測 / 水 / 生体組織 |
研究実績の概要 |
膝関節や椎間板などの軟骨組織の力学的性質に,水の状態が大きな影響を与える.軟骨組織中のこの水分子の状態,特に細胞外マトリクスに拘束された状態の結合水(拘束水)と,軟骨組織に拘束されていない自由水を非侵襲的に計測することができれば,軟骨系疾患の診断や再生軟骨の組織形成度(成熟度)や移植のタイミング評価において重要な情報となり得る. テラヘルツ波は,分子間相互作用や分子内相互作用を計測するための有効なモダリティとして研究が進められてきたことから,拘束水・自由水の計測手段として期待されている.しかしながら,従来のテラヘルツ計測では,拘束水・自由水の計測が感度の点から不正確であった. 本提案では,本研究グループの研究者らが開発してきたテラヘルツ波により計測システムに新しい発振アンテナを組込むことにより,より広いレンジのテラヘルツ波が発振できる装置の開発を行う.具体的には,自由水の計測,拘束水の推定(水総量=拘束水+自由水)のために,発振アンテナをダイポール形状からボウタイ形状に変更することにより,サブ・テラヘルツ帯の低周波テラヘルツ波の発振を目指す.そして特に軟骨組織および再生軟骨組織を計測対象とし,得られる複素誘電率の虚部から,水分子の遅いデバイ緩和モード,速い緩和モード,分子間伸縮振動モードを導出することにより,生体軟骨組織,再生軟骨組織の組織形成度の非侵襲評価の実現を目指すことを目的とする.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
サブ・テラヘルツ領域の低周波テラヘルツ波発振のために,アンテナ形状を変更し,最適構造の決定,製作および発振の実証実験を行った.発振アンテナを変更することにより,0.05-10THzのサブ・テラヘルツ領域の低周波テラヘルツ波が発振される結果が既に得られた.
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今後の研究の推進方策 |
バイオマテリアルサンプルから,サブ・テラヘルツ時間領域分光データを取得し,複素誘電率の虚部から,水分子の遅いデバイ緩和モード,速い緩和モード,分子間伸縮振動モード,そして分子間偏角振動モードなどを導出する.最終的には,対象組織内の自由水と拘束水に関するパラメータを抽出する予定である.
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次年度使用額が生じた理由 |
現有の装置および試薬・消耗品を用いて補助事業を行ったことと,参加した学会がオンライン開催であったため,旅費の計上もなく,2021年度の直接経費の支出実績はなかった. 2021年度に使用予定であった160万円は,バイオマテリアルサンプル作製および対象組織内の自由水と拘束水に関するパラメータ抽出のための試薬・プラスチック消耗品・電子部品代として物品費に100万円,旅費に20万円,サブ・テラヘルツ時間領域分光データを取得・解析するための人件費・謝金に20万円,論文投稿料および学会参加費として,その他に20万円を計上する予定である.
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