研究課題
膝関節や椎間板などの軟骨組織の力学的性質に,水の状態が大きな影響を与える.軟骨組織中のこの水分子の状態,特に細胞外マトリクスに拘束された状態の結合水(拘束水)と,軟骨組織に拘束されていない自由水を非侵襲的に計測することができれば,軟骨系疾患の診断や再生軟骨の組織形成度(成熟度)や移植のタイミング評価において重要な情報となり得る.テラヘルツ波は,分子間相互作用や分子内相互作用を計測するための有効なモダリティとして研究が進められてきたことから,拘束水・自由水の計測手段として期待されている.しかしながら,従来のテラヘルツ計測では,拘束水・自由水の計測が感度の点から不正確であった.本提案では,本研究グループの研究者らが開発してきたテラヘルツ波により計測システムに新しい発振アンテナを組込むことにより,より広いレンジのテラヘルツ波が発振できる装置の開発を行う.具体的には,自由水の計測,拘束水の推定(水総量=拘束水+自由水)のために,発振アンテナを変更することにより,サブ・テラヘルツ帯の低周波テラヘルツ波の発振を目指す.そして特に軟骨組織および再生軟骨組織を計測対象とし,得られる複素誘電率の虚部から,水分子の遅いデバイ緩和モード,速い緩和モード,分子間伸縮振動モードを導出することにより,生体軟骨組織,再生軟骨組織の組織形成度の非侵襲評価の実現を目指す.
2: おおむね順調に進展している
再生軟骨様のバイオマテリアルの固定用ジグを作製し,単純なマテリアルから細胞を有する組織まで固定可能なジグを完成させた.
軟骨様マテリアルのサブ・テラヘルツ時間領域分光データを取得し,複素誘電率の虚部から,水分子の遅いデバイ緩和モード,速い緩和モード,分子間伸縮振動モード,そして分子間偏角振動モードなどを導出する.最終的には異なる組織の水の状態を計測する.
補助事業の目的をより緻密に達成させるための研究の実施(追加実験の実施)を行う.
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Advanced Engineering Materials
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