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2021 年度 実施状況報告書

局所的な組織剛性のリアルタイム計測による安全で高効率な高周波メスの開発

研究課題

研究課題/領域番号 21K19894
研究機関東京工業大学

研究代表者

田中 智久  東京工業大学, 工学院, 准教授 (70334513)

研究分担者 朱 疆  東京工業大学, 工学院, 助教 (70509330)
研究期間 (年度) 2021-07-09 – 2024-03-31
キーワード剛性 / 生体組織 / センシング / 振動応答 / 高周波メス
研究実績の概要

令和3年度は,研究のスタートとしてまず本課題で提案する剛性計測原理の実現可能性について確認するために,関連分野の研究について広範な調査を実施した.本課題で行う局所剛性計測の対象は手術中の生体組織であり,非常に軟質かつ複合組織となっていることから,工学における振動計測で一般に対象となる硬質かつ均質な材料とは大きく異なる.このことから,最終目的であるデバイス開発には多くの工夫が必要である.調査の結果から,果物のような複合組織については,振動応答の計測により弾性特性を評価できるとした報告もあり,本課題の目的達成が十分可能であることが確認できた.従って加振パラメータなどを適切に設定することで必要な精度で剛性計測が実現できると考えられる.
一方,研究期間を通して使用するための実験装置の設計にも着手した.本装置の中心となる操作部は人が片手で持ちながら使用する事を想定しており,操作対象に対して加振を行うための加振装置と,その加振に対して操作対象の振動応答を計測するための加速度ピックアップ,同時に反力を計測するためのロードセルを備えたもので,加振装置については対象が軟質であることもあり比較的低出力の超音波振動子を用いることとしている.一方,この操作部を動かしながら対象に力を加えたり,先端に刃物を取り付けることで切開動作を行う実験を高い再現性で行うため,PCにより制御が可能な2軸の自動ステージを構成し,操作部をステージ上に設置することで実験装置全体を構成する事としている.
さらに,初期段階の実験に用いる生体組織を模した人工的な操作対象の準備を検討し,医師が訓練に用いる際に用いるシリコンゴムをベースとした材料を入手し,それを成形することで使用することとした.また,医療分野の生体モデルなどの作成に用いられる3次元プリンタによる人口組織もでるを用いることも検討中である.

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

研究のスタート段階の文献調査については,オンラインでの電子ジャーナルを活用したサーベイを行う事で比較的順調に実施ができた.
一方,装置設計については,使用する加振装置やセンサ類について所望の性能を持った製品の選定を慎重に行っているために時間がかかっており,特注品や受注生産品などの使用も検討しているため当初の予定より若干遅れている状況である.また,装置に使用する加工部品についても,特に高精度部品について加工業者の選定に時間がかかり,計画が遅れる原因となった.ただし,その他の装置に用いる機械要素類については,計画段階でおおよそ選定済みであったため,納期も含めて問題はない.
また,研究期間前半で実験対象として用いる均質軟質組織のモデル材料についても,研究代表者らがこれまで研究に用いてきた生体モデル用のシリコンゴムやPDMSをベースに検討することで,スムーズに選定が行えた.さらに,研究代表者が所属する研究機関や,従来協力を得てきた外部機関の3Dプリンタを有効に活用することで,実生体組織を模した試験片の作成が行える目途も立っている.
以上,装置設計について若干の遅れはあるが研究計画は順調に進んでいる.

今後の研究の推進方策

令和4年度は,前年度から継続している実験装置の設計を早い段階で終了し,速やかに実装を行う.一方,本課題で提案する局所剛性計測デバイスの中心部となる,加振機能と振動応答計測機能が一体となった操作部について,まず既存のパーツやセンサを用いることでシンプルな組み合わせにより構成し,装置部品の製作や組み込みセンサの手配と並行して予備実験を実施する.この予備実験により,提案する剛性計測に適した加振パラメータやセンサの固定方法を検討し,さらに計測精度など基本パラメータを取得する.
予備実験,および装置実装後に始める本実験の初期段階は均質な軟質材料を用いて数種類の既知の弾性率を持つ試験片に対して実施する.このため,あらかじめ用意した材料の弾性率を計測しておき,必要に応じて速やかに準備ができる環境を整備する.また,令和4年度の後半から人口組織のモデルを用いた実験に移行する事を見据え,3Dプリンタによる造形を行うための造形装置使用の手配,および組織の3Dモデルの作成もあらかじめ実施しておき,令和4年度の後半からモデルを使った剛性計測実験に移行する.
最終年度の令和5年度からは,高周波メスを導入し食用肉などの実生体組織を用いた剛性計測原理の確立に向けて研究の仕上げに取り掛かる.前年度までの人口組織モデルと刃物を用いた実験とは,操作器具と対象組織の組み合わせが変わるため,加振パラメータの調整と装置の修正が必要となる事が想定される.これを丁寧に実施し,提案原理の確立と適用範囲の確認を行うことで実用技術としての提案につなげる.

次年度使用額が生じた理由

研究の計画段階において令和3年度中の完了を予定していた装置の設計が,予備実験を含めて慎重に検討を行った結果,令和4年度初頭まで遅れる見通しとなった.これに伴って装置関連の機械部品,センサー類,および加工費の支出が次年度使用額として令和4年度に移動した.
また,やはり装置設計時の検討作業において行う協力先の医療機関における予備実験についても,当初計画の50%を次年度に実施する事としたため,それに伴う旅費などが繰り越しとなった.
以上のように,令和3年度後半に予定していた実験装置実装に関連した支出予定が次年度の初めに移っているため,令和4年度に計画を変更して使用する予定である.

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公開日: 2022-12-28  

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