研究課題/領域番号 |
21K19896
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
村越 道生 金沢大学, フロンティア工学系, 准教授 (70570901)
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研究分担者 |
杉本 寿史 金沢大学, 医学系, 准教授 (20547179)
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研究期間 (年度) |
2021-07-09 – 2024-03-31
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キーワード | 頭蓋内圧 / ICP / 非侵襲計測 |
研究実績の概要 |
頭蓋内圧(intracranial pressure: ICP)は通常10 mmHg 前後となる.脳内の出血や脳脊髄液の循環不良はICPの増大(亢進)を引き起こす.ICP亢進は脳機能障害に直結するため,常時監視・管理することが推奨される.しかしその計測は頭蓋骨や腰椎に直接挿入したカテーテルの他端に圧力ゲージ取り付けるといった侵襲性の高い方法に限られている.非侵襲的にICPを計測する技術の確立は急務である.本研究では,外耳道を介したICPの非侵襲計測法を提案し,その原理を検証するとともに,ベッドサイドで使用可能なラップトップ型プロトタイプシステムを開発することを目標とする. 本年度は,まず初年度に完成させた聴覚-脳脊椎系シミュレータ(物理モデル)を用いて,計測原理の検証に取り組んだ.モデルを用いてICPの亢進状態を模擬し,外耳道から見た鼓膜側の音響インピーダンスの変化を計測する.もし,ICPの変化に応じた音響インピーダンスの変化が計測されれば,想定していた「外耳道内音響インピーダンスが原理的にICPの影響下にあるはずであり,もしそうであるならば,経外耳道的にICPを非侵襲に計測できる可能性がある」という仮説の検証が達成される.ICP変化時の振動振幅を測定したところ,1 kHz付近においてICP亢進により鼓膜のRFが増加し振幅が低下する様子が観察された.さらに,ICP変化時のSPLカーブを測定したところ,ICP亢進によりRFが増加しΔSPLが減少することが確認された.次に,成人(18耳)においていきみにより脳圧亢進状態を模擬した際のSPLカーブの測定を実施した.その結果RFの有意な増加が確認された(p < 0.05).これらの結果より,経外耳道的にICP変化を測定できる可能性が示唆された.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画通り,聴覚-脳脊椎系シミュレータ(物理モデル)を用いて,計測原理の検証を完了した.また,成人においていきみにより脳圧亢進状態を模擬し,有意なRFの変化が捉えられることも確認できた.計画通り順調に進捗している.
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今後の研究の推進方策 |
最終年度は,物理モデルの改良に加え,ICP管理対象となっている患者での計測を検討している.またそれに向けたハード及びソフトの改良(ラップトップ型プロトタイプ)を計画している.音刺激および音解析の精度を高めるため,昨年度導入した高精度オーディオインターフェースを用いたシステムの構築と,実際の使用に向けたユーザーインターフェースの設計を行う.必要な倫理審査の承認を受けるなど計測体制の整備も進め,開発したプロトタイプを用いて,ICP管理対象患者10名程度を対象に試験を実施する.具体的には,くも膜下出血,重症頭部外傷,脳室内出血(水頭症)などの症例について検討を進めている.これらの実施により臨床での使用可能性の探索(臨床なし)に取り組みたいと考えている.
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度に計画していた旅費について,新型コロナウィルス感染症の影響により出張を控えたために残額が生じた.また臨床研究についても同様に実施が遅れたために残額が生じた.最終年度はこれらについて実施の見通しが立ちつつあり,着実に実施していく計画である.
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