研究課題/領域番号 |
21K19902
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
松本 健郎 名古屋大学, 工学研究科, 教授 (30209639)
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研究分担者 |
前田 英次郎 名古屋大学, 工学研究科, 准教授 (20581614)
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研究期間 (年度) |
2021-07-09 – 2023-03-31
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キーワード | バイオメカニクス / メ力ノバイオロジー / 細胞核 / DNA / クロマチン |
研究実績の概要 |
本研究では細胞核に対する力学刺激として,マイクロ流路を通過させる方法とマイクロピペットで核を動的に圧縮する方法の2つを用いることとした.研究初年度の本年度は主に装置の試作,実験方法の確立を進めた. 1)マイクロ流路を用いた細胞核力学負荷:DNAをHoechst33342で蛍光染色した細胞懸濁液を様々な幅W,長さLの狭隘部を有するマイクロ流路に通す系を確立した.当初,流路に導入した細胞数に比べ,流出側で得られる細胞数が数分の一になる奇妙な現象が観察された.これは流路内の流速が遅く細胞が重力により沈降し流路の各所に溜まるためであることが判った.流路を細くし流路形状を工夫することで導入した細胞と得られる細胞の数がほぼ同一になるようにすることができた. 2)細胞核の動的圧縮負荷系構築と細胞機能評価:まず,ガラスマイクロピペットの先端を加熱して先端が直径200μm程度の球である圧子を作製した.当初は圧子にピエゾ素子を付けて上下させ,細胞に圧縮を加える計画であったが,ピエゾの伸縮により圧子先端が大きく振れ回ることが判明したため,圧子を固定し,細胞の入ったシャーレ側にピエゾ素子を取り付けて細胞を上下させ,圧子に押し付ける方式に変えた.ドーナツ型のピエゾ素子を採用し,この中央の穴に適度な摩擦を持って填まるような細胞培養槽を自作した.底面は細胞の高倍率での観察が可能なように,カバーガラスを取り付けた.試作した装置で周波数1から1kHz程度まで振幅1μm程度で圧縮を加えられることを確かめた.また,細胞周期によってクロマチンの分散しやすさが異なる可能性に思い至り,血清飢餓培養により細胞周期をG0期に揃え,その後,通常培地に戻してからS期細胞が多数出現するまでの時間を計測し,S期とそれ以外での圧縮刺激によるDNA凝集塊の個数変化の違いを調べる準備を進めた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
実験装置の試作,実験方法の確立は順調に進んだが,実験データの蓄積が始められていないため,この点では「やや遅れている」と言える.しかし,細胞周期が細胞核圧縮に伴うDNA凝集塊の個数変化と関係している可能性に気付いたのは,極めて有意義であったため,全体としては「おおむね順調に進展している」と考えた.
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今後の研究の推進方策 |
初年度に試作した装置,確立した方法を用いてデータの蓄積を進める.特に細胞核の動的圧縮のテーマについては細胞周期に気を配って実験を進める予定である.
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