研究課題
本研究では細胞核に対する力学刺激として,マイクロ流路を通過させる方法とマイクロピペットで核を動的に圧縮する方法の2つを用いることとした.2年目の本年度は確立した装置・方法を用い,データ蓄積を進めた.1)マイクロ流路を用いた細胞核力学負荷:DNAをHoechst33342で蛍光染色したMC3T3-E1細胞の懸濁液を幅10μm,長さ0ー100μmの狭隘部を有するマイクロ流路に通し,その後のDNA凝集塊の大きさと数の変化を調べた.その結果,狭隘部長さが増加するにつれ凝集塊の数が減ったが総体積は変わらず.狭隘部を通過させることにより,凝集塊同士が融合した可能性が考えられた.また,狭隘部を通した細胞を培養し,増殖率を調べたところ,狭隘部長さが長いほど,細胞増殖率が低下することが判った.2)細胞核の動的圧縮負荷系構築と細胞機能評価:DNAをHoechst33342で蛍光染色したMC3T3-E1細胞を落射蛍光でリアルタイム観察しながら振幅1μm,周波数1 ー 1 kHzの範囲で細胞を押込み,細胞核に動的圧縮刺激を加えた.血清飢餓培養で細胞周期を揃え,その後,通常培地に変更して細胞周期をS期ならびに非S期の細胞に分けて動的圧縮刺激の効果を検討した.その結果,800Hzの周波数で5分間刺激すると,S期の場合はDNA凝集塊の数が有意に低下したのに対し,非S期の場合はDNA凝集塊が有意に増加する結果が得られた.一方,細胞核の投影面積については,S期の細胞では変化なく,非S期の細胞では圧縮により有意に増加する結果が得られた.S期ではDNA複製のためにDNAが緩んだ状態になるため,外力によりDNA凝集塊が減少し,また,緩んだDNAが核膜を内側から押すことにより各内圧が上昇し,核が潰れにくくなった可能性が考えられた.
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