研究課題
近年、低酸素症腫瘍の放射線感受性を高め、周囲の正常組織の損傷を最小限に抑える放射線増感治療の研究が活発となっている。そこで、当研究グループが開発したPAA-TiOx NPsはH2O2を徐放する特性により、H2O2送達の問題を克服する糸口を見出した。しかし、in vivoにおいて静脈投与されたPAA-TiOx NPsは腫瘍への一定の蓄積を見せつつも、他臓器にも分布が見られた。それ故に、TiOx NPsの腫瘍内滞留性を改善し、治療効果増大と生体毒性を低減させる必要があった。本研究ではTiOx NPsの能動的ターゲティングを目指し、修飾剤としてRutinGを選択した。先行研究では、ポリフェノールが持つカテコール基は水系溶媒中でも容易にTiO2表面を修飾することが知られている。また、RutinGは難溶性物質をグリコシドによって水溶化させる効果が確認されている。つまりRutinGを修飾した場合、腫瘍組織に到達した物質が蓄積するEnhanced Permeability and Retention effect (EPR効果)の粒径範囲で分散し、グリコシド部分によりGLUT1過剰発現がん細胞に補足される可能性が高いと言える。そこで本研究では、腫瘍外での蓄積を抑制することを目指し、新たな粒子分散修飾剤の検討を行った。ポリフェノール配糖体であるαGlucosylrutin (RutinG)を修飾した過酸化チタンナノ粒子(RutinG-TiOx NPs)の作製を行った。RutinG-TiOx NPsには、PAAと同様に粒子分散を行う機能があり、放射線増感効果を高めるH2O2の徐放性が確認された。更には、in vitroで放射線増感効果を持つことが示し、GLUT1標的を駆動力とした粒子の細胞取り込み量増加を確認できた。
すべて 2022
すべて 雑誌論文 (1件) (うち国際共著 1件、 査読あり 1件、 オープンアクセス 1件)
Journal of Experimental & Clinical Cancer Research
巻: 41 ページ: 146
10.1186/s13046-022-02358-6