研究課題/領域番号 |
21K19913
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研究機関 | 徳島大学 |
研究代表者 |
高成 広起 徳島大学, ポストLEDフォトニクス研究所, 特任講師 (70723253)
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研究分担者 |
江本 顕雄 徳島大学, ポストLEDフォトニクス研究所, 特任講師 (80509662)
吉井 一倫 徳島大学, ポストLEDフォトニクス研究所, 特任准教授 (90582627)
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研究期間 (年度) |
2021-07-09 – 2023-03-31
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キーワード | デュアルコム分光 / ITO薄膜 / 電界 |
研究実績の概要 |
初年度は2台の光周波数コム光源を同期させ、サンプルに照射する計測用コムと参照光として用いる参照コムを干渉させて干渉波のビートを測定するデュアルコム干渉システムを構築した。生体計測のためには将来的に反射配置の光学系とすることが望ましいが、凹凸が不規則なサンプルの測定で反射配置光学系を構築することは困難であるため、まずは透過配置で光学系を構築し、「電位変化によってサンプルの透過率、反射率、あるいは透過光・反射光の位相が変化する」という仮説が正しいか確認する作業から開始することにした。また、最初から夾雑なデータを含む生体サンプルを用いると計測データの解釈が困難になることから、細胞膜を模して電位の印加が可能なITO薄膜をガラス基板上に作製し、ITO薄膜に印加された電位の有無によるデュアルコム分光の計測を行った。この結果、3 Vの電圧で通電したITO薄膜では透過光強度に大きな違いを見いだせず、透過率に大きな変化が生じないことが示唆された。一方で、透過光の位相は劇的に変化しており、電位変化によって透過光の位相が大きく変化することが示された。今後は再現性を確認すると共に、印加する電圧を細胞膜電位と同等の80 mVから90 mV程度に抑えても、電位変化による位相変化が生じるか確認する作業などを進め、デュアルコム分光法による電位測定の概念を確立する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度では目標としていたデュアルコム分光装置の構築を完了した。またガラス基板上にITO薄膜を作製し、ITO薄膜に通電した際の透過光の位相変化を確認することができた。「デュアルコム分光法によって電位変化を非接触・非標識で計測する」という概念の確立に大きく近づいており、計画は順調に進展していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
ITO薄膜に3 Vの通電をした際の位相変化は確認されたが、実験回数がまだ少ないために繰り返し実験により再現性を確認する必要がある。また3 Vの電位は細胞の膜電位変化の30倍に及ぶため、細胞膜電位変化である80 mVから90 mVの範囲でも同様の変化が生じるかを検証する必要がある。さらにミリ秒単位で生じる細胞膜電位変化をデュアルコム分光法の高速計測で捉えることが目標であることから、定電位の印加による計測だけでなく、周期的に電位を変化させた場合の透過光の位相計測を検証する必要がある。最終年度はこれらの検証を行い、「デュアルコム分光法による非接触・非標識の電位測定」技術を確立することを目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
フォトディテクターを研究所に既存の中古装置を用いたため、その分の支出が繰り越しとなった。現状で中古装置でも充分に対応できているが、ややノイズが多く解析が困難である可能性があり、買い換えに繰越金を用いる予定である。あるいは、将来的に細胞を用いた実験を計画していることから、細胞に直接電圧を印加する装置の購入などに振り替えて充てる可能性もある。
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