本研究では、肝臓由来細胞外マトリックスを基盤とした細孔制御スポンジニードル(L-ECM/PcSN)を開発し、肝臓表面に搭載可能なDetachable-Liverを作製することを当初の目的とした。 2023年度は、表面がフィルム状の多層アガローススポンジニードル基材(Multi-layer sponge needle; MSニードル)の物性とin vitro及びin vivoでの細胞培養評価を行った。直径**mm、高さmmのMSニードルを作製し、BSA(ウシ血清アルブミン; 分子量66.5 kDa)とLDH(L-乳酸脱水素酵素; 140 kDa)の拡散試験を実施した。BSAは早期に拡散供給されるものの、補体と同等の分子量を持つLDHの拡散は抑制された。すなわち、MSニードルはフィルム構造を有することで、細胞・液性免疫を抑制し得ることが示唆された。 MSニードルにラット初代肝細胞を4.0×10^5 cells/mLで播種し、7日間アガロースゲル上で培養した。一般的なコラーゲンコートディッシュ、コラーゲンスポンジやアガローススポンジでは培養5日目にはアルブミン産生能が低下・消失するものの、MSニードルでは向上・維持された。肝特異的な遺伝子発現解析では、Cps1やArg1(尿素回路)、Foxo1(糖新生)、G6pc(解糖系)等、遺伝子発現レベルが維持された。HE染色で確認された組織体形成や、液性因子の拡散供給に起因していると考え得る。また、肝臓表面にMSニードルを穿刺、ラット初代肝細胞を播種したところ、in vitroと同様にスフェロイドを形成し、少なくとも5日間、生存した。MSニードルは容易に除去することが可能であった。 一方、肝組織形成のための細胞増殖展開は実施できなかった。また、MSニードルへのL-ECMの導入は、研究推進中である。
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