本研究では,眼科医でも原因特定が困難な眼炎症疾患の新たな診断情報を与える革新的な非侵襲眼内診断技術を開発するために,眼内の炎症細胞や腫瘍細胞がもつ固有の微弱な自発蛍光をリアルタイムかつシングルセルレベルに識別可能なイメージングの技術基盤を築くことを目的としている.R4年(最終年)度は,【課題1】分光計測システムを利用した採取組織細胞の蛍光データベース構築および眼疾患診断に有用な情報の抽出と【課題2】眼内浮遊細胞のin vivo非侵襲イメージングシステムの開発を実施した.課題1の成果:励起波長485 nmに加え,515 nmにて眼内細胞の自発蛍光測定を行い,いずれの励起波長においても正常細胞に比べて腫瘍細胞が緑色帯と赤色帯にて特徴的な自発蛍光を示すことを明らかにした.課題2の成果:励起レーザー光を特定の条件で照射することで細胞からの自発蛍光を非侵襲かつ高効率に取得できる手法を見出し,眼内細胞の微弱な自発蛍光検出技術の基盤を構築した.研究期間全体を通じて得られた成果:R3年度の成果である高感度カメラを用いた細胞自発蛍光検出システム構築を踏まえ,眼科検査において最も多用される基本的な眼科機器である細隙灯顕微鏡に眼内細胞の自発蛍光高効率検出技術と超高感度分光イメージングと組み合わせた眼内細胞イメージングの技術基盤を構築するとともに,眼炎症性疾患の診断補助となる非侵襲眼科検査機器開発の可能性を見出した.
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