研究実績の概要 |
グラフェンは、ナノグラフェン、グラフェン量子ドット、酸化グラフェン、還元した酸化グラフェンなど様々なものが報告され、それぞれの特徴を活かした先端材料が開発されている。その応用範囲は電池、センサー、そして、医療材料までと幅広く、特に医療材料として用いる場合はその安全性が問題にされ、臓器への蓄積あるいは排泄の有無、また、体内で分解されるのか、されるのであれば、その速度や分解産物を解析する必要がある。本研究では、炭素材料の一つであるナノグラフェンに注目し、13Cラベルしたナノグラフェンを合成し、動物体内での蓄積、排泄、細胞内での分解、さらには、微生物による分解を13C-NMRや質量分析を駆使し解析する。そして、カーボン材料の生体への影響や環境負荷に関する情報を得ることを目的としている。 13Cラベルしたナノグラフェンは13Cラベルした無水酢酸(1,1',2,2'-13C4)を原料に合成されるが、その原料が比較的高額であるため(22万円/250mg)、本年度はまず、通常の炭素同位体(12C)の無水酢酸を用いて、できるだけ高い収率で得られる条件検討を行なった。その結果、最適な触媒量、温度、反応時間を確定し、次に、13Cラベルした無水酢酸(1,1',2,2'-13C4)を原料にナノグラフェンを合成した。それを13C-NMRにより分析し、ナノグラフェン由来のシグナルを確認した。 次に、マウス体内、あるいは、細菌による代謝物を評価する準備として、ナノグラフェンの製剤化を行なった。これは、ナノグラフェンが水に分散することができず、そのままマウスに投与する、あるいは、細菌の倍地中に添加することができないためである。製剤化にはポリ乳酸を使い、ナノグラフェンを内包させたポリ乳酸ナノ粒子を作製した。そして、動物実験および細菌培養実験の準備を開始した。
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