老化が起こる主原因の1つは、細胞内に蓄積した不全ミトコンドリア(Mt)の存在である。本来、マイトファジーは不全Mtを選択的に除去するMtの品質管理機能を担っているが、老化細胞では細胞質内に大量のp53が存在しParkinと相互作用を形成、Parkin依存型ユビキチン介在型マイトファジーの誘導が阻害されている。さらに不全Mtから放出されるROSがDNAを損傷しクロマチン断片化を誘導、その蓄積がcGAS/STING経路を活性化させSASP因子を発現、誘発する。本研究ではミトコンドリアの品質管理を目的とした新規ナノキャリアを合成、そのキャリアを用い老化細胞の老化抑制(マイトファジー誘導)あるいは除去(アポトーシス誘導:Senolytic薬剤)を標的とした加齢性疾患創薬を検討する。 今年度はアポトーシス誘導型ナノキャリアを中心に合成した。老化細胞の除去(アポトーシス誘導:Senolytic薬剤)は標的とした加齢性疾患創薬となる可能性があり、その効果は既に動物実験等で証明されている。我々のコンセプトではミトコンドリア(Mt)周辺のH2O2発生量 = (SOD酵素活性)x(Mt指向性) でアポトーシスは決定されると考えている。従って、著しく品質低下したMtでは細胞は後期老化に陥り、MtはH2O2に対してアポトーシスを優先的に起こすため死細胞を誘導すると考えられ、H2O2発生量が多いアポトーシス誘導型ナノキャリアを老化細胞に投与するとアポトーシスが優先的に起こり、薬剤はSenolytic薬剤として機能した。
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