研究課題/領域番号 |
21K19921
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研究機関 | 東京都立大学 |
研究代表者 |
朝山 章一郎 東京都立大学, 都市環境科学研究科, 准教授 (90315755)
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研究期間 (年度) |
2021-07-09 – 2024-03-31
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キーワード | 神経細胞回復 / 病因物質排除 / マルチ作用型バイオマテリアル / 認知症治療 |
研究実績の概要 |
神経細胞回復(インスリンの作用)と病因物質排除(コレステロール末端修飾ポリエチレングリコール:Chol-PEGの作用)のマルチな作用機序を有するバイオマテリアル(Chol-PEG修飾インスリン)を創製し、認知症治療に挑戦した。本年度は、Chol-PEGとインスリンとの結合能を向上させるため、Chol-PEGのPEG分子量を500程度に短くしたところ(Chol-PEG500)、Chol-PEG500がベシクル形成することを見出した。得られたベシクルの内水層にインスリンが内包できれば、経鼻投与による脳内送達効率の向上に繋がると期待し、Native-PAGEやBio-TEM等により評価した。PAGEによるインスリンバンドのリタデーションや、TEMによる球状形態観察結果より、Chol-PEG500ベシクル内への神経細胞回復のためのインスリンの内包を示唆する結果を得た。一方、Chol-PEG500は、病因物質であるアミロイドβの凝集を解離させることを、アミロイド線維を検出する蛍光色素であるチオフラビンTを用いて、評価した。その結果、Chol-PEG500存在下、チオフラビンTの蛍光は低下した。また、蛍光顕微鏡観察によっても、Chol-PEG500存在下、アミロイド線維に基づく蛍光が認められなくなった。これらの結果は、ベシクルを形成するChol-PEG500により、アミロイドβ由来の病因物質を排除したことを示唆している。以上、神経細胞回復と病因物質排除のマルチな作用機序を有するバイオマテリアルの創製のため、インスリンを内包するChol-PEG500によるベシクル形成に成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
神経細胞回復(インスリンの作用)と病因物質排除(コレステロール末端修飾ポリエチレングリコール:Chol-PEGの作用)のマルチな作用機序を有するバイオマテリアル(Chol-PEG修飾インスリン)の創製の観点から、病因物質であるアミロイドβの凝集を解離させるChol-PEG500によるベシクル形成を見出し、神経細胞回復のためのインスリンの内包に成功したため。
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今後の研究の推進方策 |
病因物質アミロイドβの排除と神経細胞回復効果の検証のための細胞実験を進める。さらに、マウス経鼻投与による脳内送達効率の評価、アルツハイマー病モデルマウスの脳機能向上解析へと推進していく。
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