研究課題
生体で炎症が起きた場合、その炎症により細胞死を起こした細胞よりDNA, RNA, ヒストンといった様々なダメージ関連分子パターン(DAMPs)と呼ばれる分子群が放出される。そのDAMPsが、組織内の細胞の自然免疫受容体に結合することで、更なる炎症を惹起し、病態を悪化させることが知られており、新型コロナウイルス肺炎でも問題となっている。本研究では、このDAMPsをポリエチレングリコール(PEG)で被覆し、自然免疫受容体への認識を回避することを目指した。カチオン性のDAMPsにはPEG化アニオン性ペプチドで、アニオン性のDAMPsにはPEG化カチオン性ペプチドで、それぞれ捕捉することを検討した。前年度の研究で、マウスに対して、カチオン性や、アニオン性のDAMPsを投与し、さらにそれぞれと反対に帯電したPEG化ペプチドを投与することで、炎症反応を軽減することに成功している。一方で、実際に治療に用いる際には、PEG化ペプチドがある程度の期間、血中に滞留する必要がある。しかし、排泄が遅延すると、副作用の原因ともなる。本年度は様々なPEG化カチオン/アニオン性ペプチドについて、マウスで血中滞留性を評価し、その設計指針を得ることに成功した。特に、PEG化カチオン性ペプチドが胆汁排泄する条件を見出すことができた。また、近年PEG抗体やPEGが惹起するアナフィラキシーが問題となっている。本年、ポリサルコシンや、ポリエチルオキサゾリンといったPEGの代替で核酸を被覆した際の作用も検討した。それぞれ、被覆作用に違いはあるもののPEGの代替として用いることができることを確認した。以上のように、本研究では、DAMPsをPEG化することで炎症反応を軽減することの概念実証を行い、さらに実際の治療に即した最適化にも成功した。
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すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (12件) (うち国際学会 2件、 招待講演 9件) 備考 (1件)
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