研究課題/領域番号 |
21K19924
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研究機関 | 和歌山県立医科大学 |
研究代表者 |
山田 宏 和歌山県立医科大学, 医学部, 教授 (70275361)
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研究分担者 |
原田 悌志 和歌山県立医科大学, 医学部, 助教 (20838320)
南方 邦彦 和歌山県立医科大学, 医学部, 学内助教 (50838307)
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研究期間 (年度) |
2021-07-09 – 2024-03-31
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キーワード | ステロイド性大腿骨頭壊死 / 動物モデル / Muse細胞 |
研究実績の概要 |
10週齢のWistar系雄性ラットを用いて、ステロイド性大腿骨頭壊死動物モデルの作成を行った。まず、炎症状態を引き起こすため、Toll-like receptor 4のリガンドであるLipopolysaccaride (LPS) 2.0mg/kgを投与した。次いで、Methylprednisolone (MPSL) 20mg/kgの投与を行った。MPSL投与から2週後に大腿骨頭を採取し、病理組織学的に大腿骨頭壊死発生の有無を評価した。使用したラット30匹中11匹で片側または両側大腿骨頭の骨梁構造内にempty lacunaeやpyknotic nucleiといった大腿骨頭壊死を示唆する病理学的所見を認めた。残りのラット19匹は大腿骨頭の骨化障害や骨化遅延により骨梁構造が十分に確認できず、骨頭壊死の有無を判定することは困難であった。骨化障害・遅延は大腿骨頭壊死を認めた11匹でもみられた。大腿骨頭の骨化障害・遅延に使用品種や飼育環境が影響している可能性を考慮し、品種(Wistar/ST、Wistar、SD)や生産業者の変更を試みたが、大腿骨頭の十分な骨化はみられなかった。10週齢では骨成熟が得られていない可能性を考慮し、15週齢ラットを使用したところ、大腿骨頭の骨化範囲は拡大していたが、依然としての骨化障害・遅延を伴っていた。大腿骨頭の骨化障害、骨化遅延は、薬剤投与の有無に関わらず確認された。以上より、Wistar雄性ラットに対するLPS・MPSL投与により大腿骨頭壊死が誘発されることは確認できたが、安定した動物モデルの供給には未だ至っていない。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今回確認された大腿骨頭の骨化障害は、過去に高血圧自然発症ラットでの確認が報告されており、その原因として大腿骨頭栄養血管の血流障害の可能性が考えられている。そのため、骨化障害・骨化遅延を伴うラットに発生した大腿骨頭壊死が、ステロイド投与により誘発されたものと断定できず、ステロイド性大腿骨頭壊死動物モデルとして適切かどうか疑問がのこる。しかし、骨化障害・骨化遅延を伴っていない骨成熟したラットにおいても、本手法による大腿骨頭壊死の発生が確認されていることから、ステロイド性大腿骨頭壊死動物モデルの作成手法は確立できているものと考える。
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今後の研究の推進方策 |
ラット大腿骨頭骨化障害の要因を考察し、骨化障害を伴わない正常ラットの導入に努める。また、使用実験動物種の変更についても検討する。骨成熟が得られている実験動物を使用すれば、本研究手法により安定したステロイド性動物モデルの供給が可能になると考えられ、Muse細胞の投与へと発展させられるものと考える。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナ感染症対策による臨床業務が多忙を極め、動物実験を中断・延期せざる時期が度重なったため。
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