研究課題/領域番号 |
21K19934
|
研究機関 | 川崎医科大学 |
研究代表者 |
永坂 岳司 川崎医科大学, 医学部, 准教授 (30452569)
|
研究分担者 |
山口 佳之 川崎医科大学, 医学部, 教授 (10230377)
岡脇 誠 川崎医科大学, 医学部, 講師 (40509254)
谷岡 洋亮 川崎医科大学, 医学部, 講師 (40775491)
|
研究期間 (年度) |
2021-07-09 – 2024-03-31
|
キーワード | 癌性腹膜炎 / 癌免疫 / メチル化 |
研究実績の概要 |
癌性腹水中のCD4/CD8T細胞は、癌抗原に長期曝露されているため、末梢血中CD4/CD8T細胞よりも高頻度にPD1等のT細胞抑制レセプター(IRs)を発現しているだけでなく、より疲弊した状態(Exhausted)に移行していると考えられる。Exhausted stageのCD4/CD8T細胞は、IRsを抑制するImmune-checkpoint-blockade(ICB)に不応な状態となっており、ICBの奏功を期待することは出来ない。本研究は、腹水中に存在するT細胞を脱メチル化剤と共に培養を行い、Exhausted CD4/CD8T細胞を再活性化へと誘導することによる難治性癌性腹水患者への新規治療法の開発を行うと共にT細胞の活性化状態を予測可能とするmethylation pattern検出によるT cell staging技術の開発を試みる。現在までに、T cell staging検出技術の最適化を行った。IFNγ/TBX21/PD1/TCF7/CCR7 DMR methylation patternを最初のT cell staging biomarker候補に、重要DMR領域の検討を行ったところ、IFNを除くTBX21/PD1/TCF7/CCR7が最終候補となった。このDMR methylation patternを切除進行再発胃癌患者22名の治療前後の血液サンプルのFACSによるCD3+CD8+PD1+/CD3+CD8+PD1-/CD3+CD4+ PD1+/CD3+CD4+PD1-のリンパ球の分離を行い、その各分画においてDMR methylation patternの検証を行っている。尚、この22例中12例がICB投与前後のリンパ球分画の検討が可能であった。今後は、腹水中リンパ球に対し、まず、このDMR methylation patternの検証を行う。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究は、ヌードマウスに腹水癌細胞CDXを移植し、併せてDACを培地に加えた腹水中培養リンパ球とICB併用による抗腫瘍効果の検討と、T cell stagingの検証である。マウス実験前に最適化が必要なT cell stagingのためのマーカー解析技術の構築・最適化の遅れのためによるマウスを用いた実験の導入が少し遅れている。現在は、T cell stagingのためのマーカー解析技術の構築・最適化も終了している。この最適化の結果、IFNを除くTBX21/PD1/TCF7/CCR7がT cell stagingの候補バイオマーカーとなっている。胃癌患者と健常人の末梢血リンパ球全体の解析では、驚くべきことに、胃癌患者におけるPD1/CCR7 DMRは有意差をもってメチル化割合が高く(P<.0001)、TCF7 DMRは有意差をもってメチル化割合が低い (P=0.03)という結果を得ている。
|
今後の研究の推進方策 |
胃癌患者と健常人の末梢血リンパ球全体の解析にて明らかに異なるDMR methylation patternを呈したPD1/TCF7/CCR7に加えTBX21も共に、FACSによるCD3+CD8+PD1+/CD3+CD8+PD1-/CD3+CD4+ PD1+/CD3+CD4+PD1-のリンパ球の分離を行い、その各分画においてDMR methylation patternの検証を今後も鋭意行う予定である。 また、癌性腹水患者から採取された腹水リンパ球のDMR methylation patternの検証を行い、かつ、DACを加えて培養した腹水リンパ球DMR methylation patternの検証も行い、DMR methylation patternの変化を確認する予定である。また、この研究と平行して、ヌードマウスに腹水癌細胞CDXを移植し、DACを培地に加え培養した腹水中リンパ球を投与し、ICB併用による抗腫瘍効果の検討を行う。
|
次年度使用額が生じた理由 |
マウス飼育室の問題と、マウス実験前に最適化が必要なT cell stagingのためのマーカー解析技術の構築・最適化の遅れのためによるマウスを用いた実験の導入が遅れたためマウス購入および飼育に関する支出を2021年に控えたために生じた。 マウス飼育室の問題は解決しており、T cell stagingのためのマーカー解析技術の構築・最適化も終了しているので、2022年度以降においては研究計画書通りの研究遂行が可能となると考えている。従い、700,748円を2022年に繰り越してマウス購入および飼育に関する経費として使用する予定である。
|