研究課題
核種から放出された陽電子は、周囲の電子と対消滅し511keV放射線ペアになる。これを同時計数の原理で計測し、放射能分布を画像化するのがPETである。体内で放出された陽電子の約3割は、陽電子と電子のスピンが平行なオルト-ポジトロニウム(o-Ps)を形成する。そして、周囲のスピン平行な電子をピックオフしたり、酸素分子など不対スピンを有する常磁性物質とスピン交換反応したりすると、消滅して511keV放射線ペアとなる。本研究では、陽電子が511keV放射線ペアに変わるまでのわずかな時間差(Ps寿命)をがん酸素状態などの診断情報として使う量子PET(Q-PET)のコンセプトを提案し、その実現可能性を明らかにすることを目的とした。2021年度は、PET検出器ペアを用いた検証システムを構築した。Time-of-flight(TOF)分解能は250 psである。線源は、1275 keVの即発ガンマ線を出す陽電子放出核種であるNa-22を使用した。2つの線源をそれぞれPs寿命が既知の2種類の標準物質(Ps寿命1.62±0.05 ns、2.10±0.05 ns)にくっつけた。放射能分布画像において、1.64±0.05 nsと2.10±0.07 nsのPs寿命値が得られ、いずれも認証値と不確かさの範囲内で一致した。2022年度は、TOF時間分解能を改善する検出器要素技術を確立した。シンチレータの表面状態については、最も時間分解能に優れたのが機械研磨+1面粗面(202 ps)、続いて全面化学研磨(203 ps)であり、両者は僅差であった。製造コストも考慮すると、全面化学研磨が最適解であると言える。遮光材については、ESRフィルムが最も性能に優れており、ESR+fast LGSOシンチレータ(全面化学研磨)で181 psのTOF時間分解能が得られた。
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すべて 雑誌論文 (7件) (うち国際共著 1件、 査読あり 7件、 オープンアクセス 4件) 学会発表 (9件) (うち国際学会 4件、 招待講演 4件) 備考 (1件)
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