研究課題/領域番号 |
21K19940
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研究機関 | 国立研究開発法人国立循環器病研究センター |
研究代表者 |
馬原 淳 国立研究開発法人国立循環器病研究センター, 研究所, 室長 (80416221)
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研究期間 (年度) |
2021-07-09 – 2024-03-31
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キーワード | 高分子MRプローブ / 微細脳動脈瘤 / アブレーション技術 / 血中循環 |
研究実績の概要 |
本研究では、交流磁場の印加によって熱を発生するマグネタイト粒子を搭載した血中循環性高分子MRプローブを用いて、MRI装置からの磁場照射で空間特異的に微細脳動脈瘤を焼灼する微細血管MRプローブ治療の開発する事にある。この研究での重要なポイントは、血中循環性高分子MRプローブが一時的に血流内を循環することにある。そこで令和3年度では、血中循環性高分子MRプローブの分子構造の最適化として、様々な分岐構造、分子量をもつポリエチレングリコールを候補分子として選定し、フルオレセインを結合させたときの分子の自己組織化構造形成の有無について検討した。動的光散乱方による分析の結果、特定の分子量をもつリニア構造ならびに8分岐型ポリエチレングリコールが、濃度増加に伴う超分子構造形成を示す事が明らかとなった。そこで、原子間力顕微鏡によりその構造を観察した結果、1000nm程度の自己組織化構造を形成しており、一時的に血流を循環する分子サイズとして適していることが見出された。これらの分子の血中循環性を実証するために、ラットに対して上述した分子を投与して一定時間間隔採血をおこない、投与分子の血中濃度を定量した。その結果、自己組織化構造を形成するリニア構造ならびに8分岐構造をもつポリエチレングリコールのみが投与1時間で高い血中濃度を示した。これらの結果より、リニア構造ならびに8分岐型構造のポリエチレングリコールが、微細脳動脈瘤を焼灼する微細血管MRプローブとしての候補分子であることを実証できた。現在、これらの分子に交流磁場で発熱する酸化鉄微粒子を結合させるための合成経路について検討、評価しており、この分子の血中滞留性や発熱特性などを順次評価する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度の研究から、高い血中循環性を示す高分子MRプローブの分子構造について候補分子をある程度絞り込め、ラットへの投与実験から血中循環性を維持することを実証できたことから、研究目標の1つのマイルストーンを達成できた。候補分子に対して酸化鉄微粒子などの交流磁場で発熱反応を引き起こす物質との結合反応について今後評価を進めていく。
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今後の研究の推進方策 |
令和3年度では、微細脳動脈瘤を焼灼する微細血管MRプローブ治療に必要な候補分子を選定できたことから、この分子に対して微粒子の結合反応経路を検討してプローブの開発を進めていく。一方で、脳動脈瘤への集積パターンを実証する必要もあることから、高分子MRプローブをラットへ投与してMRIによる脳動脈瘤イメージングとラット脳の解剖初見からプローブ分子が脳動脈瘤へ集積できることを定量的に評価する予定である。これらの2つの研究結果を評価しながら、最終目標とするMRを用いた微細脳動脈瘤の新たな焼灼技術の開発につなげる予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初予定していた研究成果よりも低い予算で、分子構造の選定に関わる成果が見出されたた。さらに合成した分子の評価についても大きな支障なく研究がすすんだため、次年度への研究費の有効利用ならびにin vivo実験の充実を図るため、次年度への繰越を決めた。
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