先行研究では計量音楽のリズム理論と計量記譜法は13世紀前半か半ばに黎明したとする説が強かったが、現存最大規模の計量音楽の選集I-Fl Plut. 29.1(1245-1255年頃に成立)がまだ計量記譜法を用いていないこと、また計量音楽のリズムに言及した理論書の成立年が1270年以前に遡れないことから、これらは1250-1260年代にはまだ体系化されていなかった可能性を指摘した。また、1280年頃にはフランコによる新しい理論と記譜法が瞬く間に広まったため、「前フランコ式」と呼ばれる初期のリズム理論と計量記譜法は1270年代におけるわずか10年間しか実践的に用いられなかったと結論づけた。
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