最終年度である本年度は、舞踏とテクストの関わりについて、昨年度から引き続き大野一雄舞踏研究所での蔵書調査を行った。近年新たに見つかった大量の蔵書を中心に、一部データ化しつつ一覧リストを作成しながら整理した。また数冊の蔵書については、大野の具体的な書き込みの分析を開始した。 また昨年に引き続き、早稲田大学演劇博物館演劇映像学連携研究拠点の2023年度公募研究課題「江口博旧蔵資料にみる戦時下から戦後の舞踊」に共同研究チームとして採択され、舞踊批評家である江口博の旧蔵資料(舞踊関係舞台写真・新聞記事スクラップ他280点)の調査、および戦前のモダンダンス、とりわけ戦時中のモダンダンサーたちの活動について分析を行った。本研究課題である舞踏誕生のバックグラウンドとして、戦前からの流れを無視することはできないため、重要な研究と位置付けている。この研究チームメンバーとともに、11月にはフランス国立舞踊センター(パンタン)にて、学術研究会「江口博旧蔵資料から見る昭和日本のモダンダンス」を開催し、フランス語にて研究発表を行なった。フランスにおいては、舞踏への関心は高いものの、戦前から続く日本におけるモダンダンスの流れに関しては未だ認知度も低く、モダンダンスを巡って日仏の研究者が意見を交わし合う重要な機会となった。また本研究会および本科研費の3年間の資料調査の成果として、冊子『江口博旧蔵資料から見る昭和日本のモダンダンス』を発行し、論考を掲載した。
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