本研究は、日本の仏教儀礼である法華懺法を検討の対象とし、その成立過程と展開を明らかにすることを目的とした。最終年度は法華懺法の儀礼に用いる次第本の調査を中心に現行版次第の成立過程の検討を行った。 法華懺法の次第本の調査については、埋経資料である瓦経に次第本が複数現存していることが判明したため、それらを調査した。紙資料の次第本は平安院政期まで確認されていたが、瓦経に注目したことで次第本の古本を平安後期まで遡ることができた。調査は2022年度末に行ったため、成果の発表は2023年度に予定している。また、その他には現行法華懺法との関連が窺えた如法懺法の文献調査を行い、湛智記『如法懺法行儀』から行儀の特徴を考究して学会にて発表した。 上記の調査と前年度までの調査から、法華懺法の現行版次第の成立過程には少なくとも三段階あったことが明らかとなった。すなわち、①法華懺法の原典である智顗撰『法華三昧行法』から一部の唱句を抜き出して次第とした段階、②第一段階の次第に加えて『法華三昧行法』からさらに唱句を追加した段階、③第二段階の次第に加えて『法華三昧行法』にはない次第が追加された現行版次第の段階である。第三段階の次第は如法懺法の次第と概ね一致し、それ以前に同様の次第はみられない。よって、現行版次第は如法懺法の次第を祖型とする次第と考えられる。成立過程の詳細は今後の学会にて発表する予定である。 なお、本研究では宮中における御懺法講の実修記録一覧表の作成も当初の目的としていた。実修された記録はおおよそ確認できているが、上記の調査・研究を優先したため、一覧表作成には至らなかった。本研究によって法華懺法の成立過程がある程度明らかになってきたため、今後は法華懺法が中世以降どのような意義を持つ儀礼であったのかを検討していく予定である。御懺法講の一覧表作成については今後の研究の一部として取り組んでいきたい。
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