研究課題/領域番号 |
21K19962
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
由良 茉委 早稲田大学, 文学学術院, 助手 (90905986)
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研究期間 (年度) |
2021-08-30 – 2023-03-31
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キーワード | マリー・ローランサン / 美術史 / コレクション調査 |
研究実績の概要 |
本研究では、日本に事務所を構えるマリー・ローランサン美術館をはじめとする国内の美術館等を中心に、マリー・ローランサンに関する未検討資料の調査を行う。あわせて、国内の所蔵作品等を新たな目録として一覧化し、美術史の視点から画家の制作活動の全貌を明らかにすることを目指す。 研究の初年となる本年度は、当初の計画通りマリー・ローランサン美術館が所蔵する一次資料の調査を実施した。今回調査対象とした資料は、主に1900年代はじめにローランサンが実際に使用していたデッサン帳で、未だ不明点の多いローランサンの初期画業を明らかにするうえで極めて重要な存在と考えられる。本資料はこれまで、様々な要因により十分に整理作業が行われてこず、その全容を明らかにした点は今回の調査の大きな成果のひとつといえる。また、資料全体のボリュームが当初の想定よりはるかに膨大であったため、調査を完了するまでやや時間を要したものの、従来知られてこなかった画家の関心や趣向を示す痕跡を数多く発見できた点も重要である。とりわけ、同時代の画家たちに対するオマージュともとれる箇所などは、いかなる芸術の流派にも属さないとされてきたローランサンの新たなまなざしを垣間みる契機となり、さらに文献研究による図像の比較作業等を通して、画家たちの間の新たな関係性を浮かび上がらせることにも繋がった。 次年度は、以上の研究成果の公表に向けて早急に準備を進めるとともに、実見調査の対象を日本全国の美術館等施設へ拡大し、国内所蔵作品および資料に関する最新版データベースを作成する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初の計画どおりに調査を実施することができたものの、想定を超えるボリュームの資料を扱ったため内容の整理に時間がかかり、年度内の成果発表に至らなかった。また新型コロナウイルス感染症拡大の影響による国内各施設の臨時閉鎖などを受け、研究を進めるにあたってやや遅れが生じた。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は、まず前年度に実施した調査にもとづく研究成果の公表に向けて準備を進める。また同時に、日本国内に所蔵されているローランサン作品および関連資料の所在を改めて一覧化し、可能な限り実見調査に赴いたうえで状況の確認を行う。現時点では少なくとも10都府県での調査を想定している。その後、すでに刊行されている『マリー・ローランサン油彩作品総目録』(求龍堂)などを参考にしながら、前年度までの調査成果もふまえ一次資料と作品との関係性について付記した、今後の研究の礎となる最新の国内版作品総目録(データベース)の完成を目指す。あわせて、新型コロナウイルスの感染状況を十分に考慮しながらではあるが、夏季にフランスへわたり、国立図書館やジャック・ドゥーセ文庫などの各施設で資料調査を実施し本研究の内容を補完したい。さらにデータベース作成と並行して、特定の作品を取り上げて同時代の芸術動向や関連する他作家などと比較し、作品にあらわれる具体的な影響関係の考察にも取り組む予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初購入を予定していた高額な用品(カメラ)について、機能が過多と感じたため選定しなおし、その後代替品を他所で獲得している研究費(同時使用可)で購入したことにより、大きな残額が生じた。 また多くの図書資料について、購入を予定していたものが在庫切れ等により入手不可となったこと、さらに新型コロナウイルスの感染拡大により旅費を使った移動が困難となったことなどが、予算の未消化につながった。 繰り越した予算については、令和3年度に実施した資料調査によって膨大なデータを整理する必要が発生したため、データの管理および編集等の作業に使用する各種デバイスの購入に充当する。また、令和4年度に計画している国内調査の件数を当初の予定から増やし、より充実した研究成果の獲得を目指してできる限り多くの作品や資料を実見できるよう、旅費と物品費を中心に予算を充当する。
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