研究課題/領域番号 |
21K19962
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
由良 茉委 早稲田大学, 文学学術院, 助手 (90905986)
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研究期間 (年度) |
2021-08-30 – 2024-03-31
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キーワード | マリー・ローランサン / 美術史 / コレクション調査 / フランス / 20世紀 |
研究実績の概要 |
本年度は、まず前年度末に実施した資料調査の内容整理を行い、その結果を所蔵元であるマリー・ローランサン美術館と共有した。資料の撮影データは、ローランサン美術館館長の吉澤公寿氏による『もっと知りたいローランサン』(東京美術、2023年2月発行)における「初期デッサン帳より」(pp. 10-11)等の項目に、資料提供という形で掲載されている。 以降は国内外で作品や資料の調査を実施予定であったが、夏頃から再び新型コロナウイルス感染症の拡大が起きたため、当面文献研究を行うこととした。ここでは、先の資料調査から得られた知見を踏まえ、ローランサンと同時代の画家たちの影響関係を探るとともに、今後の作品調査に向けて日本国内のローランサン作品のリストアップなどを進めた。 その後制限の緩和を受け、愛知県、広島県、大阪府の美術館で作品調査を行った。このうち愛知県の名古屋市美術館では、《アポリネールの娘》(1924年頃)の熟覧調査を通して、本作品が、故人アポリネールを偲ぶ友人らが主催したあるオークションと関わる可能性を見出した。これについては、2023年5月に開催される第76回美術史学会全国大会において研究発表を予定している(発表確定済み)。また各館での作品調査に際しては、学芸員の方々から様々な情報を提供していただいたとともに、日本におけるローランサンをめぐる受容のあり方などについて意見交換を行うことができた。 しかし、未だ実見がかなっていない作品が国内に多く残され、また予定していたフランスでの資料調査も実施できなかったため、本課題の研究期間を延長し、来年度も引き続き取り組むこととした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
前年度の調査成果の整理が終わらず今年度に持ち越したことや、新型コロナウイルス感染症拡大の影響を受け、予定していた調査活動が十分に行えなかった。また、本研究においてはやはりフランスにおける資料調査が必須と考えるが、これも感染症による制限を受け実施困難となり、満足のいく研究成果を得ることができなかった。
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今後の研究の推進方策 |
研究期間を延長し、まずは国内の美術館等施設において引き続き作品調査に取り組む。あわせて、夏から秋にかけてフランスでの資料調査を計画し、ローランサンの書簡や、新聞、雑誌記事等の一次資料の収集にあたる。これらの成果を踏まえ、国内所蔵の主要作品を一覧化した総合的データベースの作成を進めるとともに、日本のコレクションの全体像を概観することで、新たな視点から画家の制作活動について解釈を提示する。
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次年度使用額が生じた理由 |
感染症拡大等の理由により、作品調査で使用予定だった旅費の多くを使い切れなかったため。未使用分は、研究期間を次年度まで延長したうえで、主に国内外における研究調査旅費として使用予定である。その他、研究遂行にあたって必要となる消耗品や、文献研究のための書籍などの購入にも充当する。
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