研究課題
研究活動スタート支援
本研究では、13世紀にインド・ネパールの各地を巡ったチベット人学僧チャク・ロツァワ・チュージェペル(Chag lo tsa ba Chos rje dpal, 1197-1264)の伝記の写本を解読し、第1章から第4章までの校訂テキストと英訳を作成した。これにより、13世紀のインド仏教を取り巻くインド・ネパールの社会情勢や地理、習俗、信仰の一端を、チベット人の記述を通して明らかにし、歴史資料に乏しいインド仏教に関して幅広い分野で利用可能な、新たな基礎資料を提供した。
インド仏教
本研究では、これまで知られていたゲッティンゲン大学所蔵の写本に加え、近年利用可能になったBDRC(Buddhist Digital Resource Center)の手書き写本を新たに用いることで、より正確にテキストの内容を理解することが可能となった。また、とりわけ今回解読した第2章には、チュージェペル自身がネパールで現地の学者に学んでいた様子を記す記述が含まれており、チベット人翻訳官(ロツァワ)とインド人学者との間の思想的、文化的な交流の問題を解明する上でも、本研究の持つ意義は極めて大きい。