研究課題/領域番号 |
21K19965
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
安田 和弘 早稲田大学, 文学学術院, 助手 (40905957)
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研究期間 (年度) |
2021-08-30 – 2023-03-31
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キーワード | 写真史 / ヴァナキュラー / メディア文化 |
研究実績の概要 |
本年度は、計画通りにヴァナキュラー写真に関する先行研究の検討、写真アルバムの資料蒐集およびその調査を行なった。主な先行研究としては、ジェフリー・バッチェンのヴァナキュラー写真論、エリザベス・エドワーズによる物質文化論、マーサ・ラングフォードによるオラリティーとしての写真アルバム論といった、写真を「読む」のではなく、写真を「語る」ことに重きをおいた研究が挙げられる。彼、彼女らが試みているのは、単一の写真から複数形の写真、従来の写真史や理論が重視していた「写真とは何か」という問いから「写真は何をするのか」という問いへの転換であり、特定の文化的・社会的文脈の中で生産されたモノとしての写真の働きの検討である。こうした理論の整理および応用を示すものとして、一冊の写真アルバムを「語る」とはどのような経験であるのかを「写真アルバムを「語る」-物質性・オラリティー・パフォーマンス- 」と題して、早稲田 表象・メディア論学会 第23回研究発表会にて報告した。また、資料蒐集では、戦時中に製作された写真アルバムを手に入れることができ、おさめられた写真の分析のため名古屋市内にて資料調査も行なった。そこで明らかになったのは、市井の人々が編んだ写真アルバムには、新聞紙上で掲載された写真と同じ写真イメージが多くおさめられており、私的な空間として写真アルバムは閉じていたわけではなく、多様なメディア空間とつながりを有していたということである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ヴァナキュラー写真に対する理論的なアプローチの整理は順調に進んでおり、学会発表を行うこともできた。次年度については、理論の応用と発展を試みる。資料蒐集および分析においては、アルバムにおさめられた写真についての多岐にわたる知見および調査が必要となるため、成果として結実はしていないが、基礎的な調査を継続する。
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今後の研究の推進方策 |
ヴァナキュラー写真に対する理論的アプローチは、その有用性と限界も含めて考察し、論文化する予定である。また、資料調査においては、戦時中に兵士が製作した写真アルバムを中心に、新聞や雑誌メディアに掲載された写真イメージと、アルバムにおさめられた写真の比較検討などを踏まえ、考察していきたいと思う。
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次年度使用額が生じた理由 |
資料調査を目的とした出張を計画していたが、コロナ禍の影響にて十分に実施できなかったため。
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