本研究は、近世・近代東アジアにおける中国古典医書の受容・展開・還流の実態を解明したものである。具体的には、後漢の医家・張仲景が伝染病治療法を論じた『傷寒論』を事例に、これをめぐる解釈が日中間でいかに受容・展開・還流したのを追うことでこれを行った。これは概して西洋近代医学との関係性で論じられてきた日本医学史研究を東アジアとの関係という視点から読み直す試みである。 本研究では特に近世中期から日本医家らの間でが発生した『傷寒論』の註解ブームを明・清代医学からの影響や日本古学派儒者の思想的影響、及び麻疹・痘瘡・腸チフス・風邪といった疫病に注目しつつ検討を行った。
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