研究課題/領域番号 |
21K19972
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研究機関 | 大阪経済大学 |
研究代表者 |
畑 一成 大阪経済大学, 経営学部, 講師 (00899057)
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研究期間 (年度) |
2021-08-30 – 2023-03-31
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キーワード | ゲーテ / ニュートン / ロバート・ボイル / 色彩論 / 実験哲学 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、ロバート・ボイル(1627-1691)の著作や科学的営為を詳細に考察することを通じて、ボイルがゲーテ色彩論の方法論、あるいは科学性そのものにどのような影響を及ぼしているのかを見定め、それが内包する意義を捉えることにある。ゲーテは、自身の『色彩論について』の中で、ボイルを色彩研究の先駆者と位置付けている。なぜゲーテがボイルを高く評価したのかは、これまでゲーテ研究においてほとんど明らかにされてこなかった。これまでの研究では、ボイルではなく、ニュートンを対立軸にゲーテの特徴づけと近代科学との関係性が考察されてきた。本研究ではニュートンではなく、今までほとんど顧みられなかったボイルを通じて、そうした考察を行う点に独自性がある。 初年度は、ボイルの色彩研究だけではなく、化学研究や自然哲学的な考察など読み解き、ボイルの全体像をつかもうとした。Rose-Mary SargentのThe Diffident NaturalistやMichael HunterによるRobert Boyle reconsideredなどを通覧し、ガリレイやフランシス・ベーコンなどの影響を受けながら、ボイルが自身の自然哲学を打ち立てていく過程を吟味した。特に、ボイルがベーコン主義者であるとの研究が多数あるものの、近年ではそれを否定する研究結果も現れており、ボイルによるベーコンに関する記述を批判的かつ精密に考察した。特に、ボイルやベーコンを単なる経験主義の文脈からだけではなく、実験主義の文脈からも考察することが重要であると認識することができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
ゲーテ自然学の一次資料などを海外の出版社から取り寄せようとしたが、新型コロナ感染症の影響もあってか、手元に届くのに数か月を要し、一部はいまだ配送されていない。そのため、ボイルの自然哲学と彼の色彩論を、ゲーテのそれと本格的に比較する作業が遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
ボイルの実験哲学やゲーテの自然学において、単に「観察する」だけではなく、実験によって「再現する」ことが理論の正当性や科学性の確立に大きく貢献している。この「経験」と「理論」を結ぶ実験の内実をより詳細に考察することが課題であると明確にした。ボイルとゲーテの数学に対する考察は類似点が多いが、根拠としている思想は大きく違っている可能性がある。この点を明らかにすることで実験に関する両者の考え方の輪郭をより明確にすることができる。
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次年度使用額が生じた理由 |
国際郵便の配送が不安定で、発注した洋書が予定通り納品されず、数冊キャンセルせざるを得なかったため、次年度使用額が発生した。この使用額は今年度図書の購入に充てる。
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