研究課題/領域番号 |
21K19972
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研究機関 | 大阪経済大学 |
研究代表者 |
畑 一成 大阪経済大学, 経営学部, 講師 (00899057)
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研究期間 (年度) |
2021-08-30 – 2024-03-31
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キーワード | ゲーテ / ロバート・ボイル / 色彩論 / 凝集 |
研究実績の概要 |
色彩に関してゲーテとロバート・ボイルを比較するため、両者が共通して取り上げた化学における選択的親和性を調査した。特に、本研究の目的であるボイルからゲーテへの科学史的な影響関係を詳細に見て取るために、ボイル以前のガリレオやウィリアム・ギルバートから始め、イェンス・ベルセリウスの化学思想やヘーゲルの論理思想といった広範囲の領域を調査した。その際、凝集という当時未知の物質的性質が、鍵概念となっていることを見出した。現在でいうところの元素に近い純粋な物質が、それ自体選択を行うことが言及されており、これがゲーテを含めた当時の学者らが考える無機的世界から有機的世界への蝶番になっていることが分かった。この調査結果を書籍『Die Idee der Natur』の分担執筆としてドイツで出版した。さらに、ゲーテとボイルの関係を探求するため、両者に共通する「旅行」を通じた思想の発展を研究した。ボイルにおいてはグランド・ツアーが、ゲーテにおいてはイタリア旅行が、大きな思想的転換点であったとよく言われる。ボイルは、当時の学問の先端をいっていたフィレンツェでガリレイの業績を知ることになり、ゲーテは古典研究の聖地ともいえるイタリアの各都市を回り、広く学術を認識することになる。両者が旅の伝統の中で学術をとらえていたのに対して、ニュートンは同様の旅行を行わなかった。この枝分かれが、三者の思想形成にどのような影響を与えたのかを調査した。この旅行と学術の関係について、「阪神ドイツ文学会」と「ゲーテ自然科学の集い」で学会発表を行い、数々の有益なフィードバックを得られた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究の提携を予定していたドイツの研究者らとの会合を、新型感染症による旅行制限により、実施することができなかった。また、ゲーテの自然研究に主題を絞った著作集も、発注から一年を過ぎているが、出版社の都合で未だ送付されていない。そのため、研究の骨格や筋肉は概ね整いつつあるといえるが、肌理をそろえるところでは遅れが生じている。
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今後の研究の推進方策 |
ゲーテとボイルとの関係は、単に特定分野の学説の中に限られるものではなく、広く当時の学術の潮流や政治経済の動向の中から考察されるものであるということが明らかになった。つまり、長い時間の幅や、英国とドイツに限らない欧州全体にまたがる国際性、また化学や物理学、さらに論理学といった複合領域を調査する必要があるといえる。それゆえ、ゲーテとボイルの関係をそうした広範な領域において考察する上で、その研究成果を当地のゲーテ研究と科学思想の第一級の研究者と議論することは、本研究の完成において枢要である。そのため、研究計画を修正し、研究期間を一年延長し、次年度に研究の提携者との研究の発表会を行い、その時に得られた、コメントや批判を研究にフィードバックし、研究の集約を目指すことにした。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究の提携を予定していたドイツの研究者らとの会合を、新型感染症による旅行制限により、実施することができなかったため。海外の研究らとの研究発表を次年度に実施する。
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