研究課題/領域番号 |
21K19974
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研究機関 | 九州歴史資料館 |
研究代表者 |
國生 知子 九州歴史資料館, 文化財企画推進室, 研究員(移行) (80911453)
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研究期間 (年度) |
2021-08-30 – 2023-03-31
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キーワード | 山岳霊場 / 仏教美術 / 神仏習合 / 神仏分離 / 九州 |
研究実績の概要 |
はじめに、調査対象となる高良大社と関連寺院(福聚寺・筑後国分寺・御井寺)、地元行政である久留米市教育委員会に事業の目的を説明し理解を得るとともに、今後の調査スケジュールをたてた。 はじめに調査対象としたのは、神仏分離時、明静院(高良山神宮寺御井寺の最大子院)の住僧が身を寄せた筑後国分寺である。ここでは二回の調査をおこなった。一回目は、彫刻・絵画・典籍・石造物の総数及び概要の確認をおこなった(秘仏を除く)。二回目は、絵画・典籍7点の調査と写真撮影をおこなった。 このうち、「唐本法華経」は、箱書に文政10年(1827)の年紀と明静恵光(明静院第28代恵光)の文字が確認され、高良山伝来と判明する。また、境内に立つ「石造三重塔」は、銘文に宝暦13年(1763)の年紀と高良山の文字が確認され、こちらも山伝来と確認できる。高良山のみならず、筑後地域に広く作品が残る山北石工の作品としても注目される。この他、伝来場所の確定には至っていないものの、久留米藩お抱え絵師の三谷有信(1842‐1928)が描いた「筑後国府図」などの重要作品を確認した。 一方、調査の回数が充分ではなく、まだ彫刻作品の調査に着手できていない反省点がある。 また、これと並行して先行研究を整理し、縁起や古記録の中から山内に存在した寺社堂塔の名称・位置・安置仏・由緒などの記述を抜き出し、一覧表の制作を進めた。この作業はまだ中途であるが、今後も作業を進め、絵地図との対照等もおこないながら、内容を充実させていく予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
新型コロナウイルス感染症拡大による影響が大きい。9月末まで緊急事態宣言下にあったため、寺院に出向くことが憚られ、調査スケジュールの立案が遅れた。また、1月~3月上旬まで福岡コロナ特別警報が発動され、調査の実施が滞った。結果、4回計画していた調査が2回しか実施できなかった。また、県外に出張しての類例確認も実施できなかった。 保存状態が悪い作品が多く、現場で広げることが困難であったことも、調査や写真撮影の遅れの一因となった。 現地調査ができない期間は、先行研究の整理や、文献に基づく山内寺社堂塔のデータベース作成などを進めた。
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今後の研究の推進方策 |
感染状況を勘案しつつ、できるだけ調査回数を増やすこととする。また、保存状態が悪く掛けられない大型掛幅等については、所蔵者の理解を得た上で、九州歴史資料館に輸送し写場で撮影・調査等をおこなう等の工夫をおこなう。 なお、基盤研究(C)「高良玉垂宮の仏教美術の研究-九州山岳霊場における神仏習合と神仏分離の一様相‐」(令和4~6年度)が採択されたため、こちらと一体的な研究となるよう、調査内容や成果公開の方法を組み替える。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルス感染症拡大の影響により、調査や現地確認に出かける機会が限られたため、旅費や人件費の支出が少なかった。 次年度は、できる限り、これらの機会を増やすことを目指す。また、次年度も県外出張などの制限がかかる場合は、館内での作業に備え必要な参考書籍購入などをおこなう。
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