本研究は日本語で用いられる字音読みの層位に関する史的研究である。日本漢字音は母胎音の言語的な特徴を反映して摂取され、日本語の音韻変化を受けて、現代の漢語にまで引き継がれているものである。そのうち、本研究の対象となる漢音が現代日本語の漢語で占める比率は約6割であり、その伝来と定着の過程を辿るためには、漢音を主として用いる資料(漢音資料)を用いて分析する必要がある。本研究は、中国音韻学をはじめ、日本語の音韻史に貢献するとともに、訓点資料における音読みと訓読みにおける関係性にも触れることにより訓点研究にも一助となるものである。
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