研究実績の概要 |
日本語の母音/uR/(アクセントHL)と/uR/(アクセントLH)に関する緊張性の指標であるフォルマント角度θ1について検討した。/uR/(HL)のθ1は負の値を取る傾向にあり、/uR/(LH)のθ1は正の値を取る傾向にあることが判明した。両条件(HL,LH)のθ1に有意差がみられた(p<.001)。当該母音に関するθ1は、統計的に有意差のある母音の緊張性の指標の一つとして捉えることができることを初めて明らかにした。 また、当該母音に関するθ1とピッチ変動量F066-F033の相関を検討した。相関係数r=0.505であり中程度の正の相関が認められ、有意であった(p<.001)。当該母音が示すピッチ変動量の差とθ1の関連性を初めて明らかにした。 さらに、θ1と第1フォルマント周波数F133は、両者ともに統計的に有意差のある当該母音に関する音響的な特性であることを提示し、CALLやe-learningで使用可能となる新たなデータとして「θ1の1次元マップ」、「θ1とF133の2次元マップ」を提示できることを初めて明らかにした。 調音音声学において同じカテゴリーである狭母音と位置付けられる日本語の母音/iR/と/uR/の緊張性には、高低アクセントとの関連性があるという包括的な結論を初めて導き出した。 上述の結果をもとに、英語の緊張・弛緩母音/u/,/U/の発音手法の案を緊張性と音質の観点で検討した。/u/の発音手法の案として/uR/(HL)を使用し、/U/の発音手法の案として/uR/(LH)を使用するものを提示した。 石崎(2022)が提示した英語の緊張・弛緩母音/i/,/I/の発音手法の案と、本研究による英語の緊張・弛緩母音/u/,/U/の発音手法の案には共通点があり、「英語の母音の緊張性」を「日本語の母音の高低アクセント」により実現できる可能性があることを初めて示した。
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