研究課題/領域番号 |
21K19985
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
劉 夢如 神戸大学, 人文学研究科, 人文学研究科研究員 (70907675)
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研究期間 (年度) |
2021-08-30 – 2023-03-31
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キーワード | 日本現代演劇 / 戯曲 / 台本 / 言語 / 寺山修司 / 小劇場運動演劇 / アングラ文化 |
研究実績の概要 |
①本研究の成果の一部として、論文「寺山修司古典現代語訳『新釈稲妻草紙』論―観念としての分身―」(『国文論叢』(59)、神戸大学国語国文学会、2022.3、pp.37-50)は以下の内容を明らかにした。『新釈稲妻草紙』(初出『潮』1972-1973。初刊番町書房1974)は、江戸戯作者山東京伝の読本『昔話稲妻表紙』(1806)の現代語訳とされるが、実際に独自の書き替えが複数行われている。寺山の書き替えは登場人物の性格の多義化、場面の滑稽化、下ネタの挿入などを通して、勧善懲悪という原作の規範的な世界観を反転させている。また、書き替えによって、登場人物の「分身」と見られる人物が創出される。しかし、彼らが実際に登場しておらず、原作の人物の語りや歌謡の中に語られ、「観念」としてしか存在しない。 もともと詩人であった寺山は「文学」の場から出発した。『新釈稲妻草紙』の執筆と同時期の演劇論『迷路と死海』(初出『新劇』1973-1974、初刊白水社1976)において、寺山は「文学ばなれ」を宣言し、演劇における「因果律」や「演劇の観念」を退けている。しかし、「観念」を盛り上げた本作は、その演劇実践の問題意識を反映しながらも、「文学ばなれ」の自己撞着を垣間見せている。 ②アングラ世代の代表的な劇作家――別役実、鈴木忠志、唐十郎、太田省吾、佐藤信、清水邦夫――の代表作を精読し、寺山修司の位置付けをさらに明らかにした。劇団青年芸術劇場(青芸)及びその中心的な存在である福田善之は、後のアングラ演劇に影響を与えていると考えられる。アングラ演劇に関連する文脈を把握しながら、本研究の今後の方向性を見直していく。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
①2021年度に、論文「寺山修司古典現代語訳『新釈稲妻草紙』論―観念としての分身―」は予定通りに発表。 ②本研究の遂行のために、2021年度(2021.10-2022.3)に、下記青森県・東京の記念館・資料館を一ヶ所以上訪問する予定であったが、新型コロナウイルス感染防止対策実施中のため、長距離出張を控えた。また、新型コロナワクチン接種3回目は2022年4月末に予定していたため、2021年度の出張計画を後回しにした。 三沢市寺山修司記念館(演劇実験室「天井桟敷」の舞台の上演記録、作品ノート、資料ファイル、海外上演の記事、チケットとチラシ、寺山の蔵書・写真・ハガキなどのその他の資料などを所蔵している)、早稲田大学演劇博物館(演劇全般に関する資料を所蔵している)、慶應義塾大学アートセンター土方巽アーカイブ(舞踏家土方巽に関する資料を所蔵している)への訪問予定が延期。 ③論文「寺山修司長編詩「地獄篇」(1963-1965)と土方巽「病める舞姫」(1977-1978)について」を執筆中。二つのテクストは異なる時代に発表されたが、共通点が多く見られる。例えば、二人の「私」・「見えないもの」・「眼玉」などのイメージを共有している一方、その詩的な文体も似ている。 二作とも難解なテクストである。舞踏をやめて「書く」ことに力を注いだ土方巽と、舞台監督へ転身する前に詩人として「書く」ことに集中していた寺山修司との関係性について、まだ推敲中である。
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今後の研究の推進方策 |
①延期した出張計画を見直す。2022年度に、【現在までの進捗状況】に記載した記念館・資料館を一ヶ所以上訪問予定。 ②論文「寺山修司長編詩「地獄篇」(1963-1965)と土方巽「病める舞姫」(1977-1978)について」の執筆を進め、2022年度に発表予定。 ③今まで寺山修司の作品を中心に、アングラ演劇の代表作を中心に調査してきた。アングラ世代である佐藤信・唐十郎が研究生として関わっていた「劇団青年芸術劇場(青芸)」についても調べ、アングラ演劇以前の文脈についても調査予定。
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次年度使用額が生じた理由 |
2021年度(2021.10-2022.3)に、長距離出張計画が未実施のためである(詳細は【現在までの進捗状況】の欄をご参照)。2022年度(2022.4-2023.3)に、三沢市寺山修司記念館、早稲田大学演劇博物館、慶應義塾大学アートセンター土方巽アーカイブを一ヶ所以上訪問予定。 2021年度に、演劇雑誌『新劇』(1954年1号-)などの資料を未購入のためである。2022年度に、資料整理を進めながら、計画中の対象図書・雑誌を購入予定。
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