研究課題/領域番号 |
21K19993
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研究機関 | 国際基督教大学 |
研究代表者 |
於保 淳 国際基督教大学, 教養学部, 特任助教 (00909195)
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研究期間 (年度) |
2021-08-30 – 2023-03-31
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キーワード | 数詞 / 修飾 / 非制限性 / 多次元性 / 意味論 / 語用論 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、「非制限修飾する数詞の統一的な分析は可能かどうかを検証すること」である。2021年度は日本語において、固有名詞・代名詞を修飾する数詞の検証で用いた検査法を使用し、関係節を伴う名詞を修飾する数詞の意味分類を検討した。その結果、固有名詞・代名詞を修飾する数詞と同様に慣習的含みの性質を持つことが判明した。 「ジョンが飼っている猫3匹/3匹の猫」のように関係節と共起した数詞の意味分類をMcCready (2010)の4種類のテストによって検証した。まず、「ジョンが飼っている猫3匹/3匹の猫が逃げたわけでない」のような文では否定の作用域の外で解釈される。また、「#もし太郎が飼っている猫の数が3匹だったとしても、太郎は彼が飼っている猫3匹/3匹の猫を大事にするだろう」のように、条件節の前件が後件を含意した場合でも投射される。さらに、Aが「ジョンが飼っている猫3匹/3匹の猫が逃げた」と発言し、Bが「それは嘘だ」と否定した場合、「ジョンが飼っている猫の数が3匹ではない」という解釈にはならない。これらに加え、「ジョンが飼っている猫3匹/3匹の猫が逃げた」という文はジョンが飼っている猫の数が3匹であるという情報がなくても適切に使用され、antibakgroudnessという特性がある。 これをPotts (2005)の多次元意味論の枠組みを用いて分析を試みた。固有名詞・代名詞を修飾する数詞の分析を元に「ジョンが飼っている猫」を個体表現(type e)と考え、それに右から付加する構造を提案した。さらに数詞を慣習的含みの次元へ変更するタイプシフトを仮定した。 今年度は上記に加え、類別詞の統語・意味論研究を進めた。日本語は数詞が類別詞を伴って現れため、将来的にはこの知見を数詞の非制限用法分析に組み込みたい。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
関係節を伴う名詞を修飾する数詞は名詞の前後に出てこられるが、今年度は名詞の後ろに出てくる場合のみ多次元意味論で分析を実施した。名詞の前に出てくるケースの分析は十分取り組むことができなかったため、「(3)やや遅れている」とした。
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今後の研究の推進方策 |
まず、関係節を伴う名詞を修飾する数詞のなかで名詞の前に出てくるケースを多次元意味論で分析を進めたい。そして、日本語の分析をもとにして、英語における英語における非制限 修飾語としての数詞の統語・意味特性の解明を行う。現在までの研究から日本語の非制限修飾する数詞は統一的な分析が可能であるという示唆が得られているため、最終的に本研究の目的である「非制限修飾する数詞の統一的な分析は可能かどうかを検証すること」を達成し、国内外の学会等で研究内容を発表できるよう努めたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究費予算案の中に、パソコンと書籍を計上していたが、本務校での業務の関係で年度内での購入が遅れた。2022年度は購入できなかったパソコンと書籍を速やかに購入する予定である。また海外・国内学会がオンラインでの開催の可能性があり、計画した旅費を使用しない場合は、書籍等の購入に当てる予定である。
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