研究課題/領域番号 |
21K19999
|
研究機関 | 立命館大学 |
研究代表者 |
峰見 一輝 立命館大学, スポーツ健康科学部, 講師 (90906968)
|
研究期間 (年度) |
2021-08-30 – 2023-03-31
|
キーワード | 言語学 / 心理言語学 / 文理解 / 自己ペース読文実験 / 日本語 / 文法性の錯覚 / wh疑問文 |
研究実績の概要 |
2021年度は,1) 本研究計画の遂行のための環境整備と2) 3つの行動実験を実施した。 まず1) 本研究計画の遂行のための環境整備に関しては,視線計測実験を実施するために,現所属先で使用されている視線計測器で実験を実施できるよう既存の実験プログラムに改良を加えた。 次に2) 3つの行動実験に関しては,日本語のwh疑問文における文法性の錯覚の生起メカニズムを解明するために,3つの異なる実験文を用いた自己ペース読文実験を実施した。 a) 1つ目の実験では,「どの生徒が教頭に昨日先生が教室でマンガを読んでいたかこっそり言った。」のような,主節のwh主語「どの生徒が」と埋込節主語「先生が」の間に,時の副詞「昨日」と主節与格目的語「教頭に」を含んだ,主節と埋込節の境界が比較的明確な実験文を用いた。実験の結果,上のような文法性の錯覚が生じると考えられる実験文では,文末の主節動詞位置において,文法性の錯覚によると考えられる読み時間の変化が観察された。 b) 2つ目の実験では,「どの生徒が教頭に昨日先生が教室でマンガを読んでいたかこっそり言ったらしい。」のような,主節動詞の直後にモーダル助動詞「らしい」を含んだ実験文を用いて,文末でのwrap-up効果の影響の排除を試みた。実験の結果,a)の実験と同様に,主節動詞位置に置いて,文法性の錯覚によると考えられる読み時間の変化が観察された。 c) 3つ目の実験では,上のような主節にwh句を含む文に加えて,「生徒が教頭に昨日どの先生が教室でマンガを読んでいたかこっそり言った。」のような埋込節にwh句を含む文や「生徒が教頭に昨日先生が教室でマンガを読んでいたかこっそり言った。」のようなwh句を含まない文を含んだ実験文を用いた。こちらの実験結果は現在統計分析を行なっている段階である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2021年度は,当初の予定通り,実験実施環境の整備を行ない,行動実験を実施することができたため,本研究計画はおおむね順調に進展していると評価できる。一方で,視線計測実験に用いる予定だった既存の実験プログラムに修正を加える必要が生じたため,当初予定していた視線計測実験は今年度は実施できなかった。しかしながら,当初は2回の行動実験を予定していたが,視線計測実験を行なわなかった分,当初の予定よりも1回多く行動実験を実施することができた。
|
今後の研究の推進方策 |
2022年度は,1) 自己ペース読文・視線計測実験の実施と2) 研究成果の報告を予定している。 1) 実験の実施に関しては,1回の自己ペース読文実験と2回の視線計測実験を予定している。2) 研究成果の報告に関しては,2021年度に実施した実験の結果を中心に,本研究計画に関連する研究成果を学会にて発表したうえで,論文化することを予定している。
|
次年度使用額が生じた理由 |
視線計測実験で用いる予定であった既存の実験プログラムに修正を加える必要が生じ,視線計測実験用に購入を予定していた実験用ソフト,デスクトップPC,データ解析用ワークステーションの購入などを延期したため。また,新型コロナウイルス感染拡大の影響で学会が対面ではなくオンラインでの実施となったため,旅費を使用する必要がなかったため。
|