本研究は、近年やや停滞気味であった十世紀歌人の私家集を取り上げ、どのような分析が可能であるのかを模索・提示することを目的とした。光俊本『躬恒集』下巻は三代集を出典とすることは知られていたが、本研究ではその撰歌基盤となった三代集の伝本系統を明らかにすることで、作成時期を推測した。同時に本作の描く躬恒像と院政期における躬恒像がおおむね一致することから、これを裏付けた。私家集研究は自撰家集やそれに類するものが重視され、他撰家集、特に勅撰集から撰歌された家集は等閑視されてきたが、それを取り上げる意義を提示し、成果を査読誌に掲載できたことに本研究の学術的意義がある。
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