研究課題/領域番号 |
21K20003
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研究機関 | 長崎純心大学 |
研究代表者 |
三野 貴志 長崎純心大学, 人文学部, 講師 (50910048)
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研究期間 (年度) |
2021-08-30 – 2023-03-31
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キーワード | there構文 / 英語学 / 構文文法 / 認知言語学 / 情報構造 |
研究実績の概要 |
本研究では、特定の動詞・主語名詞を伴うthere構文の振る舞いを大規模コーパスから得られた実例に基づいて明らかにすることを目指した。具体的には存在・出現を表す典型的な動詞を伴う場合の振る舞いに注目した。特に、本研究では、there接触節と呼ばれる現象に着目した。 現代英語では主語の関係代名詞の省略は許されないが (*The table stands in the corner has a broken leg.)、there構文では(1)のような省略例が用いられる。 (1) There’s a man with a Doberman comes around two or three times every night. (BNC) 先行研究によると、(1)のような破格なthere構文の第二動詞としてcomeやgoが多く用いられる。しかし、comeは一般的なthere構文でも使用できるため、わざわざ破格なthere構文を用いる動機は検討すべきであった。そこで本研究は第二要素にcomeを伴うthere構文の特徴を分析した。その結果、comeを用いる一般的なthere構文では、主語名詞の多くが抽象名詞であるのに対して、(1)のような破格なthere構文は用例の約半数が人名詞であり、名詞選択に大きな違いがあることがわかった。特に、名詞の長さも非常に短く、主語が2語の例が多数派であった。さらに、第二動詞であるcomeに後続する要素を調べたところ、to不定詞やupやoutなどの不変化詞が多く後続し (一般的なthere come構文では見られない特徴)、全体として、名詞句要素を短く、動詞句要素を長くする傾向が観察された。つまり、(1)の破格なthere構文は文末焦点の法則に基づき選択されている可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度は新任教員として大学に着任したため、授業準備など研究外に多くの時間がとられた。しかしながら、一本の論文を作成 (次年度公開予定) することができたなど、ある程度研究を順調に進めることができた。 加えて、今年度は次年度以降の研究に向けて予備的調査をある程度進めることができた。文献調査に関しては、国内外の多くの文献を読み、先行研究での分析をまとめることができた。特に、本研究ではこれまで先行研究で分析されてこなかった用例に光を当てることを目的の一つとしているため、先行研究で提示されている用例を網羅的に収集することは必須であった。また、コーパスから多くの実例を集めることができ、主語名詞の選択、場所句の生起などに関して、実例を分類することができた。 しかしながら、今年度はthere構文の研究に終始し、場所句倒置構文の分析に着手できなかった。この点に関しては、若干の遅れが見られる。
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今後の研究の推進方策 |
今後もthere構文に焦点を絞り、引き続き研究していく。特に、becomeを伴うthere構文の研究を行う。この表現は、(1) 存在・出現を表さない動詞であるbecomeが用いられている、(2) becomeが補語を伴わなっていない。という点で、異色な表現と言える。この表現の意味的・統語的特徴を大規模コーパスからの実例、英語母語話者へのインフォーマント調査を通して、明らかにしていきたい。また、この表現の振る舞いを構文文法の枠組みでどう理論化できるかも検討する。 また、there構文だけでなく、場所句倒置構文の研究にも着手するようにする。特に、comeや音放出動詞を伴う場所句倒置構文の特徴を大規模コーパスからの用例をもとに一般化することを目指す。その上で、there構文と場所句倒置構文を比較し、それぞれの分布を突き止める予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度も新型コロナウィルスの影響のため、当初予定していた国内出張を行うことができず、旅費を消化することができなかった。次年度は渡航制限も緩和されることが予想されるので、海外での国際学会を含め、学会発表および論文投稿を積極的に行う予定である。また、次年度に繰り越した助成金は研究設備の導入および研究に必要不可欠な資料の収集に当てることを予定している。
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