『説文解字篆韻譜』は単独で書物として存在しているわけではなく、『説文解字』の簡略本として誕生したわけであるから、他の『説文』関連書籍のテキストとの関連の上で、テキストが存在していると考えられる。宋代、元代においては、必ずしも、『説文』の原文そのものが受け入れられていたわけではなく、現在から見れば、当時の人の主観によって改められたテキストが広く受容されていたことが明らかとなった。これは、『篆韻譜』という簡略本が、『説文』そのものよりも広く受け入れられていたことと軌を一にする状況であり、当時の学問傾向が、当時の需要に適合したテキストを作り上げ、それを流通させるものであったことを窺うことができた。
|