本研究では、照応関係を持つことができる日本語の言語表現について調査を行った。特に、従来の束縛理論を見直すために、照応に関連する様々な言語表現を調査対象に含めた。具体的には、(i)「そんなに」の否定極性表現としての用法と束縛代名詞に関する性質、(ii)「そう」などの代用形の性質、(iii)複数の指示対象が存在する場合の交差現象、(iv)数量表現の照応用法などについて、それぞれ詳細な調査を行なった。これらのトピックは、従来の束縛理論の枠組みではあまり議論されていないが、照応関係を持ち得る言語表現を多角的な観点から分析することで、照応という言語現象の新しい側面を明らかにすることができた。
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