研究課題/領域番号 |
21K20017
|
研究機関 | 学習院大学 |
研究代表者 |
山永 尚美 学習院大学, 文学部, 助教 (30907407)
|
研究期間 (年度) |
2021-08-30 – 2023-03-31
|
キーワード | アーカイブズ / 記録管理 / 映像資料 / 記録映画 / 行政映画 |
研究実績の概要 |
本研究は、日本の行政機関で作成された映像資料を保存、管理するために必要な要件を提示することを目的とする。日本では、個人情報保護法(2001年施行)、公文書管理法(2011年施行)及び関連する諸規則等により、「行政文書」がテキスト記録のみに限定されないことが法的に定められているが、実際にアーカイブズ機関へと移管され、特定歴史公文書等となった映像資料の数量は未だ少数に留まっている。知的資源として後世に残されるべき記録が媒体種別を理由に失われると、将来の学術研究や教育活動に影響が及ぶことが懸念されることから、この問題の解消を目指すべく本研究を実施する。まず日本の公文書管理制度の展開過程について調査し、映像資料の移管実績の乏しさにつながる要因を特定する。次に、その結果を諸外国の制度と比較し、日本の現行制度に不足する要素について検討する。具体的には、(1)日本のアーカイブズ制度と映像資料との関係整理、(2)映像資料に焦点を当てた日米文書管理制度の比較、(3)行政映画に係る個別資料調査の三点を軸に研究を進める。 初年度にあたる本年度は、第一に現状の課題を抽出するべく、日本の公文書管理制度及び各種法規等と映像資料との関係を精査し、並行して国内アーカイブズ機関(公文書館)が所蔵する映像資料の所在調査を実施した。その結果を受けて事例分析を行った結果、行政事務の委託に伴う管理上の課題が明らかになったことから、論文1本を投稿した。 第二に、米国アーカイブズプログラムの基礎が築かれた1930年代から50年代初頭を中心に、米国国立公文書館の映像資料にまつわる各種取り組みについて文献調査を実施した。その結果、創立期に同館で考案された映画フィルムの整理等の手法が以後の同館の基盤となっていることが確認された。調査の成果は論文1本にまとめた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
日本のアーカイブズ制度に係る文献調査及び研究史の整理については順調に進められている。また国外制度については、文献調査を中心に研究を行っているが、感染症の影響で実地調査を見送ったことにより、範囲と内容が限定的なものとなっている。行政映画に係る個別資料調査については整理と目録化を適宜進めた。
|
今後の研究の推進方策 |
2021年度は感染症の影響から海外調査の実施が叶わず、必要な一次資料の調査・収集ができなかったため、可能であれば次年度に実施したく考えている。また、映像資料を所蔵する国内の地方公文書館にヒアリング調査を実施する。前年度からの調査結果も踏まえて、地方自治体における映像資料の保存・管理の事例、それから米国における映像資料の管理プログラムに焦点をあて、調査の成果をまとめる予定である。
|
次年度使用額が生じた理由 |
感染症流行の影響から、本年度は当初予定していた実地調査をすべて見送ることとした。そのため次年度使用額が発生している。 次年度使用額については、実地調査のほか、資料の調査・収集費等に使用する予定である。
|