研究課題/領域番号 |
21K20021
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研究機関 | 中央大学 |
研究代表者 |
鈴木 大悟 中央大学, 法学部, 助教 (60908002)
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研究期間 (年度) |
2021-08-30 – 2023-03-31
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キーワード | ルネ・クルヴェル / ハヴロック・エリス / シュルレアリスム |
研究実績の概要 |
2021年度、本研究は、両大戦間のシュルレアリスム運動に参加した作家・理論家ルネ・クルヴェル(1900-1935)の作品のうち、1929年の「小説」『おまえたちは狂人か』を採り上げ、それをパリ・サント・ジュヌヴィエーヴ図書館内ジャック・ドゥーセ文庫所蔵のクルヴェルの未公開資料(読書ノート「ハヴロック・エリス(Ms.6939)」)と照合することにより、性的マイノリティであったクルヴェルにおけるエリスの影響について実証的に解明しようとした。 本研究はまず、研究代表者によってすでに解読・整理されている「エリス・ノート」を、改めて精査した。次にこの資料と、読書対象となっているエリスの著作『羞恥心・性的周期性・自体愛』(仏訳1908年)を照合し、作家はエリスから何をどのように読み取ったのか検討した。そして最後に、以上のような作業を踏まえて、『おまえたちは狂人か』とエリスの接点を探った。一般的にはエリスの造語とされる「エオニズム(服装倒錯)」というキーワードが小説に頻出するものの、クルヴェルとエリスとの影響関係は簡単に可視化しがたいことが判明した。そこで、「小説」後半の舞台ともなったベルリン当時の文化状況や、マグヌス・ヒルシュフェルトの性科学研究所の活動などについて調査すると同時に、作家が読むことができたエリスの著作全般、つまり1908年から本格的な仏訳が始まった一連の性心理研究や、社会衛生研究・夢研究等も調査の対象とした。以上の研究状況については、所属機関の紀要等を通じて、追って報告予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2021年度、本研究は、ルネ・クルヴェル作品のうち、「小説」『おまえたちは狂人か』(1929年)をとくに採り上げ、作家の未公開読書ノート「ハヴロック・エリス(Ms.6939)」と照合することにより、クルヴェルにおけるエリスの影響について解明しようとした。研究の結果、問題の小説におけるエリスの影響は、複雑な経路をたどっていることが判明した。小説後半の舞台ともなったベルリン当時の文化状況や、マグヌス・ヒルシュフェルトの性科学研究所の活動などをさらに調査する必要があるだろう。また、クルヴェルが読むことができたエリスの著作全般、つまり1908年から本格的な仏訳が始まった一連の性心理研究や、社会衛生研究・夢研究等の検討も必要になるだろう。
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今後の研究の推進方策 |
2022年度、本研究は、両大戦間のシュルレアリスム運動に参加した作家・理論家ルネ・クルヴェル(1900-1935)の作品のうち、1933年の「小説」『皿に突っ込んだ足』をとくに採り上げ、それをパリ・サント・ジュヌヴィエーヴ図書館内ジャック・ドゥーセ文庫所蔵のクルヴェルの未公開資料(読書ノート「サド(Ms.6933)」)等と照合することにより、共産主義革命を志向したクルヴェルにおけるサドの影響について実証的な解明を目指す。 加えて、2021年度の研究におけるクルヴェルとエリスの関係を巡る考察も継続する。「小説」『おまえたちは狂人か』後半の舞台ともなったベルリン当時の文化状況や、マグヌス・ヒルシュフェルトの性科学研究所の活動などを調査すると同時に、作家が読むことができたエリスの著作全般、つまり1908年から本格的な仏訳が始まった一連の性心理研究や、社会衛生研究・夢研究等も検討する。 最後に、2022年度は、本研究の最終年度にあたる。エリスとサドというビッグネームが、クルヴェルの「小説」を中心とする言語活動においてどのような役割を果たしているか、その総括を目指したい。
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次年度使用額が生じた理由 |
図書購入時の納品遅延による購入計画の変更による。 図書購入費として次年度も使用予定。
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