研究課題/領域番号 |
21K20023
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研究機関 | 東洋大学 |
研究代表者 |
上杉 未央 東洋大学, 経営学部, 講師 (60906311)
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研究期間 (年度) |
2021-08-30 – 2024-03-31
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キーワード | ポール・クローデル / フランス文学 / 第一次世界大戦 |
研究実績の概要 |
今年度は、コロナ禍のため、予定していたフランスでの資料収集は実施できなかったが、あらたに購入した文献を用いながら、クローデルを中心とした文人外交官の外交・著作活動に関して、研究を進めた。 その研究成果は「クローデルにおける仏独関係ー聖人詩から『繻子の靴』へ」と題した論文にまとめた。本論稿では、第一次大戦末期に書き進められた戦争詩『聖女ジュヌヴィエーヴ』『聖マルティヌス』から、クローデルの代表作となる戯曲『繻子の靴』原稿完成の1925年にかけて、作家の中で独仏観をめぐってどのような変化があったのか、明らかにすることを目的としている。先行研究では、「聖マルティヌス」と『繻子の靴』3日目1場におけるドイツの表象の近似性と、当時の国際情勢の作品への投影について指摘され、クローデルが参与した第一次世界大戦でのプロパガンダ活動が文学作品に色濃く影響しているとされる。また、クローデルが自身の戦争詩を紹介する講演の原稿を見るとその意図は明確となる。しかしながら、1919年から1924年に書き進められた『繻子の靴』に関しては、作品が大衆の間に流通しないことをクローデルは想定しており 、より個人的な書物として想定されたこの作品には、フランスの外交官としての政治的態度とはまた別のものを読み取ることができるのではないだろうかとの仮説を立てた。本論は、それぞれの作品でのドイツ、フランスの表象に着目することで、クローデルの独仏観とその変容について検討した。さらには、フランスの文人外交官であったジャン・ジロドゥーの文学作品における独仏の表象の仕方とクローデルのそれとを比較することで、クローデルの独自性を検証した。この論文は2023年度中に論集に投稿する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2022年度も前年度に引き続き、コロナ禍の影響により、予定していたフランスでの資料調査を実施することができなかった。
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今後の研究の推進方策 |
課題採択期間を2023年度まで延長し、今年度は2回ほど、フランスでの資料調査(外務省資料室、フランス国立図書館、フランス国立文書館など)を進める予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
2022年度中に予定していたフランスでの資料調査が、コロナ禍により渡航が難しく、実現しなかったために次年度に繰り越すこととした。
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