エミール・ゾラの『ルーゴン=マッカール叢書』の地方及び地方都市を舞台とする作品と『三都市叢書』を分析対象として、19世紀後半のフランス文学作品に描かれた空間の表象と登場人物の移動を描いた記述について考察することを目的とした本研究の最終年度にあたる3年目の実績として、2022年度まではコロナ禍のために困難であったフランス国立図書館やパリ郊外のメダンにあるエミール・ゾラの記念館での資料調査を行い、フランス滞在中にはエミール・ゾラに関する研究集会に参加した。 また前年度に引き続き、『三都市叢書』の第1巻目の作品である『ルルド』に関して、この作品の2015年にClassiques Garnierより刊行された最新の批評校訂版を読み込みながら、この作品の中心的な舞台となるフランスの地方都市ルルドの描かれ方と、ゾラが作品執筆に先駆けて現地取材を行った際に書き残した一種の旅行記録である Mon voyage a Lourdes の中で記述された現実の街との比較分析を行った。これに関しては、このテーマに関わる共著論集の刊行を予定しており、それにむけ編著者として目下編集及び執筆作業を進めている。 さらに『ルーゴン=マッカール叢書』の地方及び地方都市を舞台とする作品に関しては、前年度より継続して、第12巻『生きる喜び』(La Joie de vivre)、第13巻 『ジェルミナル』(Germinal)、第15巻『大地』(La Terre)に関して、これらの作品の中で本研究テーマに関わる記述箇所を中心に分析を引き続き進めており、それらの成果に関して所属学会や大学の紀要等での発表を予定している。
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