研究課題/領域番号 |
21K20027
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研究機関 | 名古屋学院大学 |
研究代表者 |
黄 竹佑 名古屋学院大学, 外国語学部, 講師 (70908665)
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研究期間 (年度) |
2021-08-30 – 2024-03-31
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キーワード | 形態構造 / 韻律情報 / フット / 持続時間 / アクセント / 日本語 |
研究実績の概要 |
本研究課題は韻律情報と形態構造の相互作用に関する研究であり、当該年度に実施した研究では、韻律情報と形態構造の相互作用について実証的な検証を行った。本研究の意義は、日本語の韻律情報と形態構造の関係性を理論的に分析し、実験により検証することで、言語現象の一般化と語形成メカニズムの理解に寄与することである。また、研究の重要性は、心理言語学的実験を通じて、生産性が限られる語形でも検証可能となる。今年度の実験を行った結果、単純語と複合語の音声的長さが異なることが示唆されている。これにより、音声の長さは形態構造やフットなどの韻律情報と関係していることが判明した。次年度の研究展開については、引き続き実験を通じて韻律情報と形態構造の相互作用に関する知見を蓄積し、研究成果を国際学会(ICPhS)や国際誌・国際学会の予稿集に発表することを計画している。さらに、オンライン実験の構築法や実験プラットホームに関する知見を公開し、オンライン実験の普及と発展に貢献することも目指している。今後は日本語だけではなく、異なる言語や方言における韻律情報と形態構造の相互作用を比較検討し、言語間の類似点や相違点を実験により明らかにすることも視野に入れている。これにより、言語の普遍性や特異性に関する理解がさらに進展することが期待される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当該年度は新型コロナウイルスの影響で渡航制限が緩和され、海外の学会における発表ができるようになった。本課題では、日本語の形態構造と音声的な長さの関係についてオンライン産出実験を模索しながら実施した。単純語と複合語に対して行われた実験の結果から、日本語母語話者は形態素の境界を音声的な長さによって区別する可能性が示唆された。この結果は、日本語における音声と形態構造が関連していることを証明したものであり、更に両者の交互作用が実証されている。また、研究成果の発表も積極的に行った。理論的背景については日本英語学会のシンポジウムで発表し、実験結果はJapanese Korean Linguistics 30で口頭発表を行った。総じて、本研究課題はおおむね順調に進展しているといえる。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究の推進に向けて、以下のことが予定されている。まず、音声知覚に関する実験の結果を国際学会(ICPhS)で発表することとなり、この発表を通じて、多くの研究者から意見やフィードバックを得ることができると考えられる。また、本研究課題の計画書に書かれていた通り、オンライン音声実験の知見を整理し、本として出版し共有する予定である。さらに、当該年度のJapanese Korean Linguistics 30で発表した内容を論文にまとめて投稿する予定である。論文の査読を通じて、さらなる改善点や新たな疑問点が明らかになると考えられる。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度に使用額が生じた理由については主に以下の3点によるものである。まず、2022年度のJapanese Korean Linguistics 30で発表した内容を論文にまとめる予定であり、その際に英文校正を行う必要があるため、それに伴う英文校正の費用が発生する。また、本研究では、前述の論文を執筆する際に追加実験の実施を予定しているため、実験参加者への謝金が必要である。さらに、2023年度は国際学会での発表を予定しており、参加費や旅費、宿泊費などが必要である。以上の理由から、次年度に使用額が生じることになる。
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