研究課題/領域番号 |
21K20028
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研究機関 | 同志社大学 |
研究代表者 |
岸本 幹史 同志社大学, 研究開発推進機構, 嘱託研究員 (50912383)
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研究期間 (年度) |
2021-08-30 – 2023-03-31
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キーワード | 人類文化 / 相転移 / シミュレーション |
研究実績の概要 |
本研究課題の目的は、近代期の文化進化主義や段階発展はもちろん、近年の多系統進化論でも説明されない、社会の相転移や多系統分岐、その後の静的平衡相を説明する、断続平衡進化による新しい文化進化メカニズムの解明を通し、学術的問い「文化進化のメカニズムは何か?」の現代的説明法の確立を目指すことである。 初年度は、狩猟採集縄文社会から水稲農耕弥生社会への社会変化の時期を対象に、考古学研究者との共同作業を通じた具体的な遺跡資料データ(実データ)を用いて、文化・社会の相転移事象の定量評価を行った。分析対象データを、PoC的な位置づけを鑑み当初想定していた近畿以西の遺構データから、関東圏の黒曜石に関するデータへと変更している。また、定量評価手法・解析としては、もともと検討していた拡散度合いの評価に加え、グラフ理論の最小経路問題や最小全域木問題への適応も行った。結果として、各遺跡における黒曜石の産地間における拡散度合いに差があることや交易の広がりなどが確認できた。ただし、分析対象の元データ(遺跡資料データ)のバイアスが排除できていない点やサンプリング数が一定ではない点などに留意して解釈を行う必要があり、再現性などを含め、引き続き複数の手法を用いて、分析を行う必要があると考えている。 2022年度は上記の引き続き解析を進めるとともに、そのデータを事例とした断続平衡進化を説明する文化進化モデル(アルゴリズム)の開発を行い、さらには対外的な発表を重ねていきたいと考えている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
新型コロナウイルス感染拡大により、当初予定していた遺跡の現地視察の中止や、他の大学とのディスカッション、ワークショップなど中止・延期などにより、一部計画通り研究を遂行することができなかった。一方、開発環境面(Dockerなど)などは十分に拡充することができ、スムーズに開発を行う環境を整えられたため、一部の遅れを考慮しても、総じてプラスであると考え、上記のように判断している。
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今後の研究の推進方策 |
当初の計画に沿い、研究を遂行していく予定である。現在、研究活動に一部遅れが生じている部分があるものの、開発環境面での準備が想定よりも前倒して整っていることから、十分にリカバリ可能な範囲であると考えている。また、新型コロナウイルス感染拡大状況に留意しながら対外的な発表も積極的に行いたいと考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルス感染拡大の影響により、学会等を見合わせたことにより持越分が生じた。次年度は、新型コロナウイルス感染拡大の状況を勘案しながら、国際学会等への参加を検討し、その際の旅費や論文等の費用の使用を計画している。
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