研究課題/領域番号 |
21K20031
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研究機関 | 広島修道大学 |
研究代表者 |
石田 崇 広島修道大学, 人文学部, 助教 (90907007)
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研究期間 (年度) |
2021-08-30 – 2023-03-31
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キーワード | 派生形容詞 / 解釈強制 / 形容詞化 / 名詞修飾 / 形式と意味のずれ |
研究実績の概要 |
本年度は、英語の派生形容詞による名詞修飾に関して、まず、(1)名詞由来形容詞の1つである関係形容詞(Relational Adjective)による名詞修飾に関して学会や論文等で成果を発表し、さらに、(2)名詞修飾表現における解釈強制(Coercion)という現象に関して、-ble接辞によって生じる形容詞類に着目し、論文で成果を発表した。 (1)については、まず、日本英語学会第14回国際春季フォーラムで発表(納谷亮平氏 (筑波大学人文社会系助教) との共同)を行い、限定用法しか持たないといわれる英語の関係形容詞が述語位置に現れるのはなぜかという点について、従来の研究で議論されてきた要因(本来の修飾対象である主要部名詞の削除(Noun Deletion)と対比性(Contrast))に加え、名詞の特質構造(Qualia Structure)が関係することを論じ、この観点から上記の問いに答えた。この研究は学会で高く評価され、日本英語学会優秀発表賞(佳作)を受賞した。 (2)については、名詞句内の要素としての-ble 形容詞(例:conceivable, possibleなど)が強い限定詞(例:all, the mostなど)とは共起するが、弱い限定詞(例:some, noなど)とは共起しないという事実について、モダリティが関わる解釈強制の観点から説明した。具体的には、名詞を後置修飾する場合には根源的モダリティ(Root Modality)を表すことになる、-ble形容詞の「当該状況全体を量化する機能」に目を付け、(強い限定詞と違って)弱い限定詞は修飾対象となる状況を有界化できないため、そもそも量化する前提が成り立たず、したがって、-ble形容詞は弱い限定詞とは共起できないことを主張した。 その他、研究活動の成果の一部は、論文や口頭発表などの形で公表されている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、研究課題のもと、英語の派生形容詞による名詞修飾について、(1)関係形容詞が関わる研究に関して成果をあげるとともに、(2)-ble接辞によってできた派生形容詞が名詞修飾を行う際に見られる解釈強制に関する研究も行い、生産的で活発な研究活動を行っている。 このように、(1)と(2)のどちらの研究においても当初の研究計画通り進んでいるという点で、おおむね順調に進展しているといえる。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究としては、本年度明らかにした研究成果を基に、引き続き(1)関係形容詞による名詞修飾に加え、(2)-ed接辞による派生形容詞による名詞修飾(例:forked road, dogged persistance)にも着目する。 (1)については、菅原(2013)が指摘しているように、例えば、an adjectival analysis of cardinal numeralsという表現は、「基数詞が形容詞(的)であるとする分析」という意味を表している。この場合、adjectivalという関係形容詞はanalysisを直接的に修飾していないように見える。このような現象に関する先行研究の指摘を踏まえながら、関係形容詞と名詞の修飾関係を明らかにしていく。 (2)については、例えば、wooded hill は「森がある丘」を表すが、forked road は「フォークがある道」ではなく「分かれ道」を表す。また、dogged persistenceは、犬の習性に見立てて「不屈の粘り強さ」を表す。このような例におけるforkedやdoggedという-ed接辞によって派生した修飾要素が、どのように名詞と修飾関係を結んでいるかについて、予備調査として具体例を基に現象自体の記述と整理を行う。 従来、修飾対象である名詞を基盤とする研究が盛んに行われてきたが、上記のように修飾要素である形容詞を基盤とした観点から分析を行っていくことで、名詞修飾における形式と意味のずれに関わる諸問題に対する理解をより一層深められることが期待される。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度は、新型コロナウイルス感染症の蔓延による影響により、旅費の支出がなかったことが大きな要因である。次年度においても、引き続き当該状況に柔軟に対応しながら助成金を使用していく。 具体的には、当該状況が今後も続き、旅費の支出が無いと予想される場合は、先行研究に基づく文献調査として物品費やその他の支出(英文校閲費など)に過不足なく充てていく予定である。一方で、当該状況が収束すると予想される場合には、学会や研究会、研究打合せ等で当該助成金を含めた次年度分の助成金の一部を旅費として使用していく予定である。
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