研究実績の概要 |
本年度は、英語の派生形容詞による名詞修飾に関して、まず、(1)名詞由来形容詞の1つである関係形容詞(Relational Adjective)による名詞修飾に関して論文で成果を発表し、(2)名詞修飾表現における解釈強制(Coercion)という現象に関して、-ed接辞によって生じる形容詞類に着目し、発表および論文で成果を発表した。 (1)については、英語の「関係形容詞+名詞」表現(例:industrial output)と「名詞+名詞」表現(例:industry output)は、完全に同義である(Levi (1978), Beard (1995), Nikolaeva and Spencer (2021)など)という従来の指摘に対し、関係形容詞の派生に関する分析(Nagano (2013))に基づくことで、前者の方が後者よりも一定の解釈に限定されやすい(あるいは、解釈の幅が狭い)と予測されることを論文で発表した。 (2)については、forked roadやdogged persistenceのような語彙化した-ed形容詞の特殊な意味に注目し、当該意味は、Takehisa(2017)が主張している関係名詞を基体名詞とする派生分析とIshida(2021)の名詞修飾に関する仮説を統合させることで捉えられることを明らかにした。具体的には、-ed形容詞の基体名詞は、解釈上、関係名詞相当の名詞と複合形容詞を成しており、意味的に希薄な主要部である関係名詞は、メトニミーによって解釈上補われることを明らかにした。このような分析によって、実際には、問題となる-ed形容詞においてもなお、-ed接辞に本来的な装備的意味は維持されており、この点で、他の一般的な-ed形容詞と変わらないことを明らかにした。
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