レプリカ法による調査の実施:北海道島では、北見市大島2遺跡(11~12世紀)、美幌町元町2遺跡(9世紀後葉~11世紀前半)・鳥里2遺跡(8世紀中葉~9世紀)、枝幸町ホロナイポ遺跡・落切川左岸遺跡・ウエンナイ2遺跡(いずれも11~12世紀)の調査を実施した。東北地方では岩手県北上市堰向Ⅱ遺跡(9~10世紀)、横町遺跡(8世紀~10世紀初頭)、牡丹畑遺跡(8世紀末~10世紀前葉)、尻引遺跡(8世紀後葉~9世紀初頭)、菅田遺跡(9世紀前半、11世紀後半~12世紀前半)、西川目遺跡(9世紀後葉・10世紀前葉)、八幡遺跡(8世紀~10世紀初頭)、本宿遺跡(9世紀後葉~10世紀初頭)、本宿羽場遺跡(8世紀後葉・10世紀中葉)、立花南(8世紀後葉~9世紀中葉)、和野遺跡(7世紀)、奥州市高山遺跡(4世紀後半)・面塚遺跡(5世紀後葉)・中半入遺跡(9世紀前葉~10世紀前葉)の調査を実施した。採取した試料を検討しながらSEM撮影を行い、全点同定を完了した。
炭化種実データベースの構築:道東地域における報告書に報告された炭化種実の出土データを集成し、その分類群、数量、出土位置をまとめた。
研究成果のまとめ:道東・道北地域では種実圧痕が極めて低調と考えられていたが、擦文文化期(9世紀後葉~10世紀前葉・12世紀)で雑穀やシソ属の圧痕を検出し、炭化種実のみならず圧痕でも雑穀の存在が確認された。なかには1個体多量雑穀出土土器も含まれていた。この成果をもとに他の考古学的資料も含めて道東オホーツク海側における雑穀の波及・定着ルートを考える必要がある。また、基礎的データの拡充も引き続き行う必要がある。同定作業の完了に年度末まで時間を要したため、レプリカ法による調査結果の詳細報告は研究期間内に刊行できなかった。調査資料が所蔵されている機関と協議のうえ所蔵機関が発行する媒体にて報告する予定である。
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